❏設定❏
・とくになし
❏本文❏
彰人以外の全員「王様だーれだ」
彰人「……」
杏「やった~! 今回も私が王様だね!」
冬弥「すごいな、白石……開始早々、五回連続で王様を引いているぞ」
杏「ふっふっふ~、私の強運を舐めてもらっちゃ困るな~というわけで、三番が王様のほっぺにキス!」
こはね「えっと、三番は……って、あ……」
杏「ほら、こはね、三番の棒持ってるんでしょ?」
こはね「ひゃ!?」
杏「隠しても無駄だよ、ほら見せて!」
彰人「……」
彰人(なんで、こはねが三番の棒を持ってることがお前に分かるんだよ……こいつ、さっきからイカサマやって、強引にこはねとイチャついてること、隠す気ねえだろ……)
こはね「う、うう~~っ、は、恥ずかしい、けど……」
杏「そうそう、王様の命令は絶対だよ、こはね」
こはね「……っ」
こはね:恥ずかしそうに頬を赤らめながら、杏の頬にキスをする
杏「~~っ! 王様ゲームって、最高!」
こはね「う、う~~っ」
彰人(王様の好きなところを十個挙げる、王様と手を繋ぐ、王様とハグをする、王様に体を撫でさせる……で、お次はこれか。どんどん、要求がエスカレートしてきてんな……)
杏「それじゃ……次に行こうか、こはね」
こはね「……っ!? あ、杏ちゃん!?」
杏「や~、この手の柔らかさといい、肌のすべすべ感といい……こはねは最高だね」
こはね「は、恥ずかしいよ、杏ちゃん……」
杏:こはねの手を取り、撫でさする
彰人(完全におっさんだな……このままじゃ、こはねの身が危ねえし、とっととイカサマを見破って、このくだらねえゲームを終わらせるか。つーか、冬弥はこの状況、どう思って……)
冬弥「白石は、本当に小豆沢のことが大好きなんだな」
杏「今更なに言ってんの、冬弥。そんなの、当たり前でしょ」
彰人(んなことだろうと、思ってはいたが……イカサマに気づくどころか、杏のセクハラまがいの行為にも気づいてないようだな……)
杏「みんな、ちゃんと棒は引いた? それじゃ、行くよ! せーの!」
~数分後~
全員「王様だーれだ」
彰人「オレだ」
杏「……っ!? な、なんで、彰人が……!」
杏:自分が引いた棒に王様の二文字が書かれていないことに気がつくと、愕然とする
彰人「あ? オレが引いちゃ悪いってのか? それとも、私以外が引くはずない……なんて、思ってたわけじゃねえだろうな」
杏「……っ!」
冬弥・こはね「……?」
杏「~~っ! そ、そんなわけないでしょ……で、命令は?」
彰人「そうだな……そんじゃ、一番と二番がキスで。頬とかじゃなくて、口にな」
杏「……!!」
冬弥「一番だ……」
こはね「……っ!? に、二番……」
冬弥・こはね:突然の展開に戸惑いながら、自分が引いた棒を見つめる
彰人「早く王様ゲームをやめねえと、お前のこはねがどうなっても知らねえぞ」
彰人:杏の耳元で意地悪に囁く
杏「……っ!」
杏(そっか、彰人も私と同じ手を使って……)
杏「~~っ! ま、待って! さっきこはねが引こうとした棒を、彰人が横取りしてたのを見ちゃったんだけど!」
彰人「……」
冬弥「……」
こはね「……」
彰人:呆れ顔を浮かべて杏を見つめる
彰人(こいつ、一体どんな手を使って冬弥とこはねのキスを阻止してくるかと思えば……いくらなんでも無理やりすぎんだろ……そんなの、誰も信じるわけ……)
冬弥「彰人、そんなことをしていたのか?」
彰人「は?」
こはね「し、東雲くん、ズルをしちゃダメだよ?」
彰人「おい、お前ら……なに信じてんだよ。ズルは、こいつが……」
杏「と、というわけで! こはねと彰人が引いた棒は交換になりまーす!」
彰人「……!? 杏、お前、なにを勝手に……」
杏:彰人とこはねが持っている棒を強引に奪い取ると、それぞれの棒を交換させる
杏「……で、命令はなんだったっけ?」
冬弥「一番と二番がキスだ」
杏「一番は冬弥で、二番の棒を手にしてるのは?」
彰人「杏、てめえな……って、っ!?」
彰人:杏に文句を言おうと口を開くも、冬弥に両肩を掴まれると驚いたように目を見開く
彰人「冬……」
彰人:冬弥の名前を口にしようとした瞬間、冬弥に唇を塞がれて再び目を見開く
彰人「ん……っ、冬……弥……は、あっ……ん、んん……っ」
杏・こはね「……!?」
杏・こはね:二人が本当にキスをするとは思っていなかったため、驚きのあまり硬直する
冬弥:しばらくキスを続けた後、ゆっくりと唇を離す
彰人「……っ! 冬、弥……てめえ、なん、の……つもり……っ」
冬弥「俺と小豆沢がキスをするより、彰人としたほうがこの場が丸く収まるだろう」
彰人「~~っ! だからって、舌まで入れることねえだろ!」
杏・こはね(し、舌……入ってたんだ……)
彰人(女じゃあるまいし、初めてのキスに夢を見てたわけじゃねえけど、この場を収めるためだなんて、そんな、くだらない理由で……)
彰人:じわりと瞳に涙を浮かべる
冬弥「もちろん、この場を収めるためだけにしたわけではない」
彰人「は?」
冬弥「好きだ、彰人……俺と付き合ってくれ」
彰人「……!?」
杏・こはね「……!?」
彰人「おい、そんなの命令にあったか?」
冬弥「彰人、これは王様ゲームの罰ではない」
彰人「……冗談、だよな?」
冬弥「俺は、冗談はあまり得意ではない」
彰人「……」
冬弥「……」
冬弥:心なしか頬を染めている彰人の頭に手を添えると、髪の毛を梳くように優しく撫でる
彰人:大人しくされるがままになりながら、惚けた表情で冬弥の瞳を見つめる
冬弥「彰人にキスをしたかったから、した……嫌、だったか?」
彰人「……っ!」
彰人:ぶわっと勢いよく頬を真っ赤に染めると、恥ずかしそうに視線をそらす
彰人「べ、別に……嫌じゃ……」
杏「~~っ! もう、王様ゲームはおしまい!」
彰人・冬弥:二人の世界に浸っている最中に、突然鳴り響いた杏の怒号にビクリと肩を震わせる
杏「ごめん、こはね……ズルをしてたのは、彰人じゃなくて私なの」
こはね「え?」
杏「こはねとのイチャイチャを二人に見せびらかしたくて、つい……怒ってる?」
こはね「そ、そうだったんだ……でも、なんとなくそんな気がしてたから、今更怒ったりしないよ、杏ちゃん」
杏「~~っ! さすが、こはね……私の天使!」
彰人「そりゃ、杏が連続で王様を引くわ、こはねにばかりセクハラまがいの命令をするわで、気づかないほうがおかし……」
冬弥「そう、だったのか……疑ってすまない、彰人……」
彰人(そういや、気づいてないヤツが、一人だけいたな……)
こはね「わ、私も……東雲くんに、ズルはダメだなんて言っちゃって……」
彰人「悪いのは杏だろ、気にすんなって」
杏「う……」
彰人「それにしても、突然王様ゲームをやりたいって言いだしたかと思えば、終わるのも突然だな」
杏「当たり前でしょ、こはねとのイチャイチャを見せつけたくて始めたのに、なんで彰人と冬弥のイチャイチャを見せつけられなきゃいけないの!?」
彰人・冬弥「……」
こはね「あ、杏ちゃん……」
彰人:冬弥とのキスを思い出して、頬を赤らめる
冬弥:とくに表情を変えることなく、杏の言葉を聞き流す
こはね:困ったような声色で杏の名前を呟いた後、ぎこちない微笑みを浮かべる
こはね「ふふ、杏ちゃんらしいな……」
彰人「……!? おい、こはね……甘やかすなよ……」
冬弥「彰人、気持ちは分かるが、セクハラを受けたのは小豆沢なのだから、小豆沢が白石を許すのであれば……」
杏「ちょ、ちょっと、冬弥! セクハラとか言わないでくれる!? 一応、反省はしてるんだから!」
こはね「で、でも、さっきの杏ちゃん、おじさんみたいだったよ……」
杏:ショックを受けた顔で硬直する
彰人:ぶっと吹き出すと、笑いをこらえているような表情で顔を伏せる
冬弥(彰人にキスをしてこの場を収めたつもりだったが、このままでは当分収拾がつきそうにないな……)
冬弥:わちゃわちゃする三人を眺めて、困ったように眉を下げて微笑む
~終~