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    紗々匁ゆき

    @yukky_mi

    字書きときどきアクセサリー職人。

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    紗々匁ゆき

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    くっついたばかりの頃のミサ京のべろちゅーのお話。

     ミサキと「そういう仲」になったのは、黄泉に引き摺られた天司を救うと決めたあの日の夜。
     無事に二人で帰還できたことを喜び、巣籠もりの動物の如く互いを慈しみながら夜を迎え、京一郎はミサキを再び同じ寝台へと誘った。
    「お前なあ、男を寝台に誘うって意味わかってんのか?」
     ミサキのいつものぶっきらぼうな口調に甘さが滲んでいるのは、きっと思い過ごしではないだろう。
     無論、京一郎とて最初からそのつもりだ。
    「もちろんわかってるよ。それにミサキ、根の道で言っていたじゃないか」
     身体を寄せ、ずっと上背のあるミサキを見上げる。
     延べた指先で、その形の良い唇に触れた。
    「唇は帰ってからのお楽しみだ、って」
    「ああ、もう……!」
     ミサキの腕に強く抱き締められる。
     近づいてくるミサキの唇に、京一郎も背伸びをするようにして唇を寄せた。
     初めての口づけは京一郎がミサキを救うため、二度目はミサキが京一郎から息吹を抜くためのものだった。
     しかし、今は違う。
     三度目の今宵は、二人は恋人として互いを求め合う、情愛と官能に満ちたそれだった。
    「っ、は……、ミサキ……」
     角度を変えながら繰り返される口づけに、京一郎は陶然となる。
     ふふ、とミサキが忍び笑う声が聞こえた。
    「一丁前に色っぺえ顔しやがって」
     そう言うミサキこそ、瞳には情欲が宿っている。
     それはきっと、京一郎も同じだろう。
    「口、開けてみな」
     促されるままにそっと唇を開くと、再び口づけられ、そこからミサキの熱い舌が入ってきた。
    「ん、ん……!」
     反射的に引いてしまった舌を絡め取られ、上顎を舐められる。口の中がこんなに感じるだなんて知らなかった。
    「んっ、ふ、ぁ……、ぁ……っ!」
     うまく呼吸ができなくて苦しい。逃げ場のない熱が胸の辺りで渦を巻く。
     無意識に逃れようとする身体は、ミサキの腕に阻まれ、さらに強く抱きしめられた。
    「は……ぁ、ふ……ミサ、キ……」
     ミサキの舌に誘われるように、身体の奥からどんどん熱が呼び覚まされる。
     苦しくて、でも気持ちが良くて、頭の芯がくらくらする。
    「……っ、と」
     いよいよ立っていられず、京一郎が膝を折ったその瞬間、力強い腕に抱き留められた。
     口づけから解放された京一郎は、ミサキの腕の中で大きく胸を喘がせた。
    「はは、酸欠起こしちまったか」
    「もう……ミサキが長くするから……」
    「悪いな。けど、すぐに慣れるだろうよ」
    「助平……」
    「お、意味わかったか」
     京一郎の呼吸が落ち着くまで、ミサキはそのまま背中を撫でていてくれた。
     やがて落ち着いてくると、今度は置き去りにされていた快楽の先触れが燻りだしてくる。苦しいほどの愉悦の記憶が、今や快美に変わっていた。
    「……ねえ、ミサキ」
    「どうしたよ」
     ミサキに縋りつき、京一郎は乞う。
    「さっきみたいなの、もう一回しよ?」
    「なんだよ。下手すぎて酸欠起こしたばかりのくせしてよ」
    「すぐに慣れるから。ね?」
    「……ったく、しょうがねえな」
     そう言うミサキの声色は、やはり甘い。
     礼を言う代わりに、今度は京一郎から口づけた。
     ほどなくして、再び舌が絡み合う。
     今宵二度目の口づけは、過ぎるほどに甘く、優しかった。


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