完璧で不器用なあの子 ――[[rb:彼 > か]]の日。赤井は降谷と別離した。
夕刻の時間。赤井は降谷に呼び出され、警察庁からそう遠くはない公園へと来ていた。
人はまばらで、自分たちの足音だけがやけに大きく響いて聞こえた。天を仰げば、夕陽の光も届かぬほど、空には雲が重く積み重なっている。
今にも雪が降りそうだと考えていると、視界に粉雪が散らつきはじめた。
外の世界は、息が白くなり、手もかじかむほどの寒さだ。コートのポケットに手を入れたかったが、それ以上に、降谷と手を繋ぎたい気持ちがあった。
降谷の手を見る。ニットでできた赤色の手袋が視界に入り、赤井は静かに微笑んだ。赤色が嫌いだと言っていた彼は、自分との交際がはじまると、その発言自体が嘘だったかのように赤色の物を身に着けるようになった。この色しか残っていなかったんですよ、と言い訳を重ねる彼が愛らしかった。
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