Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    frnt_2

    ラクガキとかぽいぽい

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 5

    frnt_2

    ☆quiet follow

    思い付いた話をざっくりラクガキ。私紺炉の手に想いを馳せる紅ばっか書いてないかね?

    この鳴りの名を、まだ知らない。「なんでぇ、紅ちゃんまだ出ないのかい」
    松乃湯の常連客に声をかけられ、浴槽の縁に腰掛けて休んでいた紅丸は、顔だけをそちらへと向ける。真っ直ぐに流れる黒髪の先から、ポタ、とまた一滴が落ち、熱い肩を濡らした。
    「ジジイはカラスの行水だな」
    「熱い湯にカッと浸かって、サッと上がる! それが気持ちいいのよ」
    腰に手を当てて豪快に笑い、濡れた手拭いを大きく振って肩にかけると、お先、と背を向けて去って行った。ふ、と小さく笑んで、そういえばやけに静かになったと浴場を見回す。
    誰もいない。紅丸がぼんやりと風呂に浸かったり、上がって休んだりを繰り返している間に、顔見知り達は次々と上がっていっていたようだ。いつもなら、気づかないということはないのだが。
    「……、」
    は、と零れた小さな溜息さえ、壁や天井にまで届いて跳ね返ってきそうだ。濡れた髪を掻き上げ、湯船に落としていた足も引き上げる。さすがに体が熱い。
    ペタ、ペタ、と気だるげな足音をさせて、洗い場の前で止まる。蛇口の横に置かれたままの桶は、紅丸のものだ。中には、使い慣れた石鹸が入っていた。特にこだわりがあるわけではないが、幼少の頃からずっと同じ石鹸を使っている。
    初めにそれを勧めてきたのは、紺炉だった。
    『俺ぁ昔っからこれなんだ。紅も使うか?』
    「――……、」
    懐かしい頃を思い出し、そっと髪に触れる。
    ぼんやりしてしまっていたのは、そのせいだ。思い起こして、何の気なしに、二十歳も間近になった今と重ねて。
    瞬間、ドキリ、と体が揺れた。
    最後に紺炉に髪を洗ってもらったのは、いつだっただろうかと。ふと思って記憶を辿れば、鮮明に思い起こされたのは、紺炉の大きな手の感触だった。
    当然の事ながら、昔は髪を洗われることなどなんとも思わなかった。少し成長すれば、いつまでも子供扱いするなと拒んだものだったが。
    (……くそ、何なんだこりゃ)
    胸の鳴りがいつもと違う。それが何ともむず痒いのに、どうすればおさまるのか分からない。何度熱い湯に浸かっても、すっきりとしなかった。
    紺炉の大きな手が。思い起こしてからずっと、あの感触が。
    (洗われてぇとでも思ってんのか、……いや、そんなわけがあるか。ちぃとだけ懐かしく、思っただけ、)
    頭の中で独り言を呟いても、そうではない、と首を振る己がいる。ならば、一体何なんだ。こんなにも心臓が騒ぐのは、一体。
    脳裏にまた浮かぶ、紺炉の姿。紅丸の方へと延びてくる腕、広げられた掌が、優しく頭の上へ降りてきて。

    --触れられたい、と、

    「――何だってんだ、」
    大きく舌を打ち、全て振り落とすべくあえて声にした。桶を乱暴に掴んで足早に脱衣所へ向かう。
    クラクラとする。のぼせたのだ。そうでなければおかしい。詰所へ帰って、冷えた水を飲んでさっさと横になってしまえば、こんなものは。
    こんな、ものは。
    パシン、と後手に磨り硝子の戸が閉められる。最後の客を見送った天井の雫が、ピシャリと静かに床を打った。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    💖❤😍🙏☺💕
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    frnt_2

    DONE超エアブー0530合わせで書いた紺紅SSです。本当に短いですが甘々(当社比)朝チュンとなっておりますのでおやつのチョコひとかけら食べるような感覚でお楽しみいただければと思います!以前にも似たような朝チュン書いたけど許してほしい!! ゆっくりと吸い込んだ空気の質が変わり始めていることに気付いた体は、深く閉ざされていた瞼を僅かに開かせた。それに伴って、深い眠りの中にいた意識も引き上げられ、紺炉はぼやけて輪郭の崩れた世界をしばらくの間じっと見つめる。
     瞼が半分ほど開いてから六度目の呼吸で、ああ、目覚めたのだと己の内側で呟いた。
     いつもよりも瞼が重いのは、まだ空が白んでいくらも経っていない早朝であるということ、ようやく眠りについたのが真夜中も過ぎた頃であるということ。
     そうして、瞼を心地良く閉じる直前まで、浮いた汗が幾筋も流れ落ちるほど濃厚な蜜事に溺れていたことも、原因の一つであろう。
     紺炉はゆっくり、長く息を吐きながら、瞬きを繰り返して視界を磨いていく。鳥の声はまだ聞こえていない。満ちる静けさは夜半と変わりないが、夜はもう暗い水底から浮上して、部屋の隅に小さく残されているだけだ。陽を含み始めた空気を吸い込むたびに、意識もはっきりとしてくる。
     右腕に感じる、温かい重み。僅かに視線を下げれば、そこには艶やかな黒髪があった。快楽の限界を超えて気を飛ばしてしまった紅丸を抱きしめたまま、心地いい疲労感に包まれて眠りに 2685

    recommended works