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    おーり

    ゲン/千とゲ/黒千と黒千/千、千/黒千が散らかってます。
    地雷踏み防止に冒頭にカプ名(攻のあと/)入れてます。ご注意ください。
    シリーズと一万字超えた長い物はベッターにあります。https://privatter.net/u/XmGW0hCsfzjyBU3

    ※性癖ごった煮なので、パスついてます。
    ※時々、見直して加筆訂正することがあります。
    ※地味に量が多いらしいので検索避け中。

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    おーり

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    ◆ゲン/千だけど付き合っていない二人(ゲン→千空で恋はしている)が石の世界で釣りに行く話です。
    ◇カッコいいゲンはいません。下ネタです。

    ##ゲン千

    青年は元素記号を唱える 反射で煌めく川は流れの早い部分だけが深く狭い。
     魚釣りをするならそういう場所は適していない。泳いだり洗濯したりはもっぱら浅瀬もあり、流れも穏やかな下流だが、釣りをするなら上流だ。しかも隠れ場になる岩の多い、それでいて流れの和らいでいる場所。
     隣で重力に逆らった髪を揺らしながら、うんちくを垂らす千空ちゃんの話に相槌を適当に返す。一度話始めたら止まらないので、半分しか聞いてないが話している千空ちゃんは気付いていない。どころか、知識を延々と披露し続けている。
     


    「なぁんで、夏はこうも暑いの。夏の暑さ、冬の寒さだけは石化前の文明が恋しくなっちゃう」
    「地軸の傾きで夏は太陽が一番高いところで長い時間地表を照らして温める、だから一番熱い」

     季節に文句を言ったところで遠慮するわけじゃない。わかっているのに、そこに科学を説明されても千空ちゃんみたいに納得して感情が治まる俺ではない。

    「あ~、俺が聞きたいのはそんな科学的なことじゃないのよ。失ってみて初めて当たり前が普通じゃなかったんだなってそういうこと」
    「ほーん、テメーにもそういう繊細な感情があったんだな」
    「ドイヒー」

     何でも科学で説明して、物事を合理かどうか当てはめて生きてる千空ちゃんに言われたのがショックだ。絶対俺の方が君よりも風情やわび、さびを知っている。
     暑さに散々文句を言っていたら、うるさいので凉を取るついでに釣りでもして来いと追い出された。日陰にいても風が熱を運んでくる場所でミジンコとモヤシ仲良く干物になるよりはマシと釣竿を抱えて、えっちらおっちら釣りに出掛けた。



     上流は岩が多く、いくつもの支流が集まってひとつになり、ところどころ小さな滝があった。適当なところで足をとめ、「ここで良くない」と乱暴に長くなりそうな話を終わらせる。
     強引なやり方に嫌な顔をしているだろう千空ちゃんを思い浮かべながら、俺は羽織を脱いで突き出した大き目の岩の上に置く。仕込みの重さが消えて、身体がスッキリと軽くなる。

    「あ~、やっぱり脱いだ方が涼しいねぇ」
    「当たり前だろ。テメーは着過ぎだ。素材に皮がメインの服じゃねぇか」

     同じ素材でも千空ちゃんの服はワンピース型だからふいご作用で俺より涼しいんじゃない、言ったらふいご作用について説明が始まりそうなので笑っておく。

    「でもさぁ、俺手元見せれない性分なんだよね~。もうすっかり癖になっちゃっててさぁ」
    「ほーん、職業病ってことか」

     手ごたえを感じて引いた糸の先、魚影は透明にしか見えない。

    「あ~、餌だけ取られちゃった~」

     わかりやすく残念な声をあげると千空ちゃんが笑ってくれる。魚が逃げた悔しさよりも笑い顔が見れた嬉しさの方が勝る。

    「ククク、下手くそだな。魚の気持ちくれぇわかんねぇのかよ、メンタリスト」
    「俺のマジックの対象は人間限定ですぅ~。魚とコミュニケーション取れないのに魚相手にメンタリズム出来るわけないでしょ」

     ぶっきらぼうな物言いで口を尖らかせて膨れて見せる。わざとらしく不機嫌そうに振る舞う俺を千空ちゃんが呆れた顔で眺める。
     魚とコミュニケーションなんか出来なくても君のそばにいて必要とされるならそれで十分。そんなこと千空ちゃんに言ったことはないし、言うつもりもない。
     針の先にエサをつけて、狙う場所から上流に 糸を垂らす。流れで自然にエサが俺の決めたポイントに動いていく。
     手に伝わる振動を頼りに俺はすかさず竿をあげる。
     ストーンワールドでの釣り針は石化前に見たものよりも種類は少ない。職人がカセキ一人だからというのもあるが、エサを喰った瞬間に引いて魚の口に引っかかればいい、という千空の簡潔明瞭な説明に基づいて作られた釣り針だ。
     つまりかえしがなく、魚がかかっても逃げられやすいが人間に刺さっても抜けやすい。ピンと張った糸の先で暴れる魚の動きが竿から伝わってきた。
     急ぎ過ぎず、遅すぎず、魚を落とさないようにして竿をあげて糸の先にいる魚を掴む。

    「ヤマメだな」

     一目で魚の種類を千空が答える。その感想は間違ってはいない。場での発言として間違っていないから悔しいのである。称賛の言葉は要らないけれど表情だけでも驚いて欲しくある。
     釣り上げた俺の表情が落ち込んでいるのを見て、そこでようやく千空ちゃんが「あ˝―、よくやったな」と褒めた。それもとっても棒読み。褒めればいいってものでもない。俺は千空ちゃんにキラキラした目を向けられて「やるじゃねぇか」って言われたい。言われたらその顔で夜ヌける自信ある。

    「いや、態度で示した俺も悪いとは思うけどね? 何なの? 上司なの? 釣った瞬間に喜び合うとかないの?」

     ツンデレも悪くないけれど、塩の量が圧倒的に多い。だから、ちょっぴりの甘さが綿菓子以上に甘ったるく感じるんだけど。出来ればもっと甘さが欲しい。
     
    「テメーが釣ったのに俺が喜ぶ必要あるか?」
    「そう、そうなんだけどねっ」

     言っていることに間違いはないが人が望むものからズレている。

    「俺、実は意外に単細胞なとこあるから褒めてくれたら頑張る子だよ」
    「たかが細胞でもクエン酸回路は重要だぞ」

     あ、しまった。何か変なスイッチ踏んだ。

    「あ~、俺ね、石化から復活するときに石化以前に習ったかもしれないお勉強の知識が記憶されている部分が綺麗に修復されて記憶消えちゃったんだと思うんだよね」

     急に始まった説明を雑な言い訳で終わらせようと試みる。が、中身が良くなかったようで千空ちゃんの眉間のしわがグッと深くなる。
     今の今まではそんな症例なかったけれど、たまたまの偶然でもしかしての仮説は消えない。俺の場合は千空ちゃんの瞳以上に真っ赤な嘘であるが、可能性がゼロと言えない以上千空ちゃんは見えない部分も心配なのだろう。メンゴー、言い過ぎたと胸中で手を合わせる。

    「あ˝~、雑な言い方をすればエネルギーを作るときに酸素があるかないかで方法が違うってことだ。一昔前、筋肉痛は乳酸が溜まるって説があっただろ? あれは運動中に消費する酸素が不足している中で身体がエネルギーの生産を……」
     
     気を取り直すように、後頭部を手で触れる。いつもの行動をすることで安心したいのだろう。長々と始まった長の講義はいつかこの先の文明復興の中で役に立つかもしれない。ただし、今の俺には耳の痛い念仏だ。

    「今、その話重要? ストーンワールドって試験あるの?」
    「単細胞がどうとかいうからだろうが。ミトコンドリア舐めるな。人間様の細胞にいるミトコンドリアも元は単細胞微生物……」
    「俺、そういうの知らなくても大人になれて、仕事出来てる。話のネタくらいにはなるけど、別に知らなくても困らないかな~」

     真っ向から叩きつけて話の腰を折る。
     即座に気持ちよく喋っていた千空ちゃんの顔がムッとなる。ベラベラと悦に浸る千空ちゃんの顔は悪くないけど会話ってコミュニケーションなのよ。一方的な授業じゃないし、俺は生徒じゃない。仮に生徒であったなら、話聞かずに教壇に立った君の今日のパンツの色を想像してると思う。今は白いふんどしだって知ってるけどね。
     精通の始まった思春期なんて、何かと脳とちんこが連結して不用意に勃起したりするのに。
      千空ちゃんだってムラムラして下半身が興奮することもあるんだろうけど、全くそんな気配を感じさせないのは服装の勝利だと思う。
     素材的に革は重いし、布みたいに簡単に持ち上がんないから、ちょっとくらいちんこ起きても気付かれにくいんでしょ?
     ふわふわの柔らかいベッドの上で魚みたいに跳ねる千空ちゃんがストーンワールドには存在しなくても俺の脳内にいるからね。
     俺は勃起したら元素記号を唱えて、頭を冷静にさせていたけど、千空ちゃんは逆に勃起しそうだよね。
     キスもなんなら手を繋ぐのもまだだけど、俺は罠を張り巡らせて巣の真ん中で君が網にかかるのを待つ気持ち。

    「全くさっきからジーマーでなんなの、絡み過ぎじゃない?」
    「俺がテメーをからかうのは許せてもテメーが自分を卑下すんのはなんか腹が立つ」
    「はぁぁ?」

     俺を無視して千空ちゃんが自分の針の先にエサをつける。と同時に遠方から俺たちの名前を呼ぶ声が近づいてきた。

    「千空、ゲン、司チームがサメを捕まえたぞ」

     飛び込んできた情報にぱぁっと千空ちゃんの頬に紅が差す。

    「よし、メンタリスト! 解体するから手伝え」
    「それ、人選間違ってるから~!」

     襟首を捕まれ、引っ張られる。ミジンコパワーに口だけで抵抗しながら俺は千空ちゃんの歩に合わせて後退する。嫌なら振り切ればいいんだろうけれど、もったいなくって出来っこない。
     メンタリストって呼んでいる非力男をパワーが必要なサメの解体に必要とするおかしさに君が気付いてないのが嬉しいから。
     鼻歌でも歌いそうなくらいはしゃぐ千空ちゃんに作業の大変さは嫌だけど、フカヒレを一緒に食べるのは悪くないか、そう独り言を吐いた。

    <END>
    ※冷凍スリープ中の司が名前出てくる。司好きなんで寝ていることを忘れてました。ミステリーではありません。
    支部にて2022年2月13日に初出
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