生きる雨の音は。 雨が窓を激しく叩きつける。空は薄暗い。
意識の遠くで微かに聞こえていたのがだんだんと大きくなり、雨音と共に眠りから覚醒を遂げる。
まだ重い瞼を開くと同じようにぼんやり外を見つめる横顔が目に入り、こちらに気づくと相手は小さく”おはよう”と声をかけた。
「朝から雨って、なんだか憂鬱になるよね」
「まぁ梅雨だからな。そういえばあの時もずっと夜で、たまに雨が降ってたな」
ぽつり、ぽつり。
そっと開く口からこぼれるのは遠い昔の思い出のようで、実は近い日の話。
「そうだね。でも、あの時の雨は好きじゃなかった」
思い出の中から一本棘の付いた蔓を引き出すように、暁人は目の前の相手に語り返す。
「肌に当たって濡れている筈なのに、冷たくないんだ。
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