「あなたと見るから綺麗なのです」「随分遠くまで来ましたね」
「そうだなァ。この辺で良いっしょ」
満月が綺麗な夜だった。燐音は埠頭の駐車場に車を停めて、下車を促す。助手席に座っていたHiMERUは手を塞ぐ大きめな荷物は車内に置いたまま、スマホだけをポケットに入れて車を降りた。
「海に行きたい」と言い出したのは珍しくHiMERUの方だった。俺っちも海は好き。人が少ねェ夜の海なら尚更。
「海か、いいね。行こうぜ。もうすぐ夏も終わっちまうしさァ」…とすぐに了承した。大事なお姫様が行きたいというのだから、断る理由もない。今日はお互い、夜から空いていたわけだし。
夜中の海の波の音は存外大きいもので、風の音も相まって騒がしかった。
「もう夏も終わりですね」
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