夏空が迫る暑い。とても暑い日だった。すっきりした濃い青空に、大きな入道雲が立って、現実離れして見えた。君は暑いからって、川の浅瀬に入っていった。
「おいコウ、危ないぞ!」
「大丈夫だって!ヒロもおいでよ!」
君は入道雲を背に満面の笑みで手を振っていた。その瞬間が、あまりにも綺麗で、今も頭に焼き付いている。あの夏の日が忘れられない。またあの笑顔が見たい・・・・・なのに、
「なんで目を覚ましてくれないんだよ、コウ・・・!なんで、笑ってくれないんだよ・・・」
あの日からコウは眠ったままでいる。なりを潜めていた持病の再発。でも、それが落ち着いても何故かコウは目を覚まさない。
ベッドの横で、声を掛け続ける日々。ただただ、虚しい。
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