ルピカ「う、ウサギのにおい……」
木の上で眠っていたレザーは、鼻をくすぐる良い匂いで目を覚ました。
「できたよレザー! 降りてきて!」
レザーが眼下を見下ろすと、金髪を後ろで束ねた旅人の姿があった。
間もなく陽が落ち、夜の帳が下りる頃。西の空があの甘い木の実と同じ色に染められ、動物たちが寝床へと帰って行く。そんな時間に立ち昇る焚き火の煙は、空に輝く一番星へと吸い込まれていった。
寝床にしていた太い枝から飛び降り、まるで猫のように着地したレザーは、頭に乗っていた葉っぱを振り払って先の声の元へと近づいた。下で待っていた空の手には、イノシシ肉のステーキと狼の爪を模したハッシュドポテトが載せられた大皿があった。兎ではなかったが、肉の匂いには間違いない。
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