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    いろは

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    いろは

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    レザーくん誕生日おめでとう!!!!!!!!

    空レザ風味です

    #空レザ
    knittedLeather

    ルピカ「う、ウサギのにおい……」
    木の上で眠っていたレザーは、鼻をくすぐる良い匂いで目を覚ました。
    「できたよレザー! 降りてきて!」
    レザーが眼下を見下ろすと、金髪を後ろで束ねた旅人の姿があった。
    間もなく陽が落ち、夜の帳が下りる頃。西の空があの甘い木の実と同じ色に染められ、動物たちが寝床へと帰って行く。そんな時間に立ち昇る焚き火の煙は、空に輝く一番星へと吸い込まれていった。
    寝床にしていた太い枝から飛び降り、まるで猫のように着地したレザーは、頭に乗っていた葉っぱを振り払って先の声の元へと近づいた。下で待っていた空の手には、イノシシ肉のステーキと狼の爪を模したハッシュドポテトが載せられた大皿があった。兎ではなかったが、肉の匂いには間違いない。
    「うまそう」
    「でしょ。レザーに教えてもらったこれも上手くできたんだ」
    「うん。じょうず」
    木の机に敷かれたテーブルクロスの上に2人分の食器を並べる。オレも手伝うと名乗り出たレザーだったが、いいから座っててと空に椅子へと誘なわれた。
    手持ち無沙汰になったレザーは、隣で揺れる空の髪をそっと掴んだ。
    「わっ、びっくりした。なに?」
    「お前の髪、綺麗。オレ、お前の髪、好きだと思った……から?」
    自分でも分からないと言ったふうのレザーに、空は苦笑いを浮かべる。
    「それなら、レザーの髪だってふわふわで、俺も好きだよ。でもごはんの前に髪の毛は触らない方が良いかな」
    「う……ごめん」
    「食べ終わってからならいくらでも触っていいから……って、何言ってんだろ俺」
    冗談だと続けようとした空だったが、レザーの目がきらきらと輝いているのを見て仕方ないと首をすくめた。
    「さて、食べよっか」
    「食べる。腹減った」
    「じゃあきっと美味しくなるね」
    「うん。お前の作る料理、全部美味い。でも今日は、きっと特別美味い」
    今日という日がレザーにとってどれほど意味があるかは、彼自身はあまり理解していなかった。しかし、大切な人が祝ってくれる、彼らと一緒に居られるということは、とても大きな意味を持っていた。
    共に居られる。それだけのことが、とても、素晴らしいことなのだと。
    「ありがとう、空。オレのために作ってくれて。すごく、嬉しい」
    「ううん、いいんだよ。俺が祝いたかったから。それに、ハッシュドポテトのレシピも教えてもらったしね」
    ほら、と指し示された揚げ物を一つ齧る。美味い。オレが考えて作ったレシピと似た、しかし少し違った感覚のする味。作り方も材料も同じはずなのに、自分で作るよりも、美味しい。
    「……お前、やっぱり料理、上手い。でも、お前には作ってほしくない」
    「えっ、口に合わなかった? 失敗しちゃったかな……」
    「違う! 本当に美味い。失敗なんかしてない。でも……うっ、言葉が、分からない。オレ以外に作ってほしくない。オレのためにだけ、作ってほしい。わがまま、だけど、そう思った。これは、オレのものだから」
    困ったように眉尻を下げるレザーの頭を、空は身を乗り出して撫でた。
    「髪、触っちゃダメ」
    「あっ、ごめんね。でも急にしたくなっちゃった」
    優しい笑みを浮かべる空に、レザーは首を傾げた。ハッシュドポテトに手を伸ばしながら、空は言葉を続ける。
    「うん、わかった。これからもツメ型ハッシュドポテトはレザーに頼むよ。でもそれじゃあ、折角教えてもらったレシピが無駄になっちゃうな。というわけで、来年の今日も、その次の年の今日も、このハッシュドポテトを俺が作ってもいい? やっぱりレザーに食べて欲しいから」
    「もちろん。楽しみ、ありがとう」
    当たり前のように未来のことを話す空に、レザーは眩しいものを見るようにうっすらと目を細めた。
    今日だけじゃなく明日も明後日も、その先もずっと、彼が目的を果たすまでは、共に居られる。そんな保証はどこにもないのに、彼がそう言ってくれるだけで、また、あの時みたいにルピカを失うなんてことはないと、不思議とそう思えた。
    「さ、ステーキも食べてよ。こっちもモンドの友達直伝だからきっと美味しいはず」
    「うん。ありがとう、空」
    ステーキを口に運び、レザーは小さく微笑んだ。
    明日はどこに行くのだろうか。当たり前のように共に居られる。そんな小さな幸せの味は、柔らかくて口から溢れそうで慌てて飲み込んだ。
    「ありがとう、空」
    そう繰り返し、レザーはにっと歯を見せて笑った。
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