伊さんに命を救ってもらう話伊地知さんに命を救われる話
呪霊の消失反応を確認し、伊地知が帳を下ろすと1人の女性術師が飛び出してきた。
その両手にはぐったりとした少年が抱えられている。
「伊地知くん! 要救助者! 出血多量!」
簡潔に状況を説明した彼女も、腹部から多量に出血していた。
「あなたも怪我を……!」
「私はまだ保つから、この子を先に!」
言うなり彼女は少年を抱えながら後部座席に乗り込んだ。
この場まで救急車を呼ぶより、伊地知の運転で病院に駆け込んだ方が早いという判断だろう。
伊地知は呪符を取り出して、彼女に渡した。
「こちらで止血を」
そして急いで家入に連絡し、これから怪我人を搬送する旨を伝えた。
この場からなら病院に向かうより高専に帰還した方が早い。
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