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    さわら

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    さわら

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    たいくつで素敵なデート(カカイル)

     どうしよう、と思いながらイルカは上映が終わった大きなスクリーンの前を通り、人の流れに乗って映画館のロビーへと出た。ロビーの一角では上映中の映画のグッズなども売られていたが、足を止めるほどの興味もなかったのでそのまま映画館の外へ向かった。隣をカカシが黙って歩いている。カカシもグッズには興味がなさそうだった。
     薄暗かった館内に対して、外は日が照っていて少し眩しかった。次の上映時間が近く、チケット売り場は列ができて賑わっている。
     イルカはカカシと二人で映画を見に来ていた。カカシに誘われて断り切れずに来たのは良かったが、見た映画は余りにもつまらなかった。観る映画を選んだのはカカシで、随分と楽しみにしていたようだし、きっと原作か監督か、役者のファンなのだろう。それを、つまらなかったと正直に言うは気が引けた。しかし映画の内容に触れずにいるのも気まずい。
    「イルカ先生」
    「は、はい!」
     ぼんやりしていたイルカは急に声をかけられてハッとした。
    「喫茶店行かない? あ、一楽でも良いんだけど」
    「はい。いいですね」
     とりあえず映画館の前を離れる。カカシは通りを見渡してから、空いていたらどこかの店に入ろうと言った。ただもう昼時は過ぎていたが、喫茶店は人が多そうだった。この時間なら一楽の方が空いているかも知れない。
    「ところでさ、イルカ先生……映画どうだった?」
    「えっ!?」
     映画館の前をすっかり離れてからカカシが言った。流石に映画館の前では配慮したらしい。
     イルカはすぐに言葉を返せなかった。率直に聞かれると、つまらなかった以外の言葉が出てこない。映画が好きであろうカカシのことは傷つけたくない。でも、褒めるような言葉も出てこない。カカシもイルカの反応で大体察しただろう。
     カカシはイルカの顔を見て、こう提案した。
    「じゃあ、せーので感想言わない? 正直に」
    「わ、わかりました」
     せーの、とカカシが言った。イルカは覚悟を決めて息を吸った。
    「面白くなかったです!」
    「すごいつまらなかった!」
     重なったお互いの声を聞いたイルカとカカシは、顔を見合わせてから思わず噴き出した。
    「ははは、だよね」
     カカシはマスクの上からでも分かるほど表情を崩して笑った。普段ナルトたちと居る時とは随分と印象が違った。もっと気難しい人かと思っていた。
    「ごめんね、イルカ先生。つまんない映画に付き合わせて」
    「いえ、気にしないでください。でも予告の感じと違いすぎですよね」
    「一人で見に来てたらブチギレてたかも」
     イルカ先生と一緒に来てよかった、とカカシが言った。
    「あはは。楽しみにしてましたもんね、カカシ先生」
     イルカは人当たり良くそう答えてから、一緒に来て良かったというカカシの言葉に遅れて気づいて赤くなった。イルカも同じようなことを思っていたのだ。
     確かに映画はつまらなかったが、こうしてカカシと楽しく話ができている。映画を見る感性も似ているようだ。もっと自分とは違う人だと思っていた。接点も共通点もない、合わない人だと。カカシに対して勝手に持っていた苦手意識は、今は見事なまでにすっかり消え去っていた。
     カカシと映画を見に来てよかった、とイルカは思った。
    「そういえば、あの最後のとこって……」
    「あー、あれね……」
     二人はつまらなかった映画について楽しく喋りながら通りを歩いて行った。途中に二店舗あった喫茶店はどちらも混んでいて、結局行き慣れた一楽へと向かう。二人の楽しいお喋りは、一楽のラーメンが出て来るまで途切れなかった。
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