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    さわら

    @sawaragomu
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    さわら

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    🐬先生誕生日おめでとう
    殴り書きの書き途中ですが…お誕生日SS(カカイル+🐶)

     カカシは、イルカの誕生日当日に、忍犬たちを連れてイルカの住むアパートを訪れた。お呼ばれしたということで、忍犬たちは蝶ネクタイやリボンを着けておめかししている。
     前々日まで任務で忍犬共々泥だらけで帰って来たので、昨日のうちに全員洗って、ブラッシングをして、爪も切って、今日の忍犬たちは心なしかピカピカしていた。イルカの家へ行くというご褒美が無ければ、忍犬たちはここまで綺麗にさせてくれなかっただろう。お蔭で昨日はそれだけで一日が潰れてしまった。
     カカシがイルカの部屋の呼び鈴を押すと、周りにいた忍犬たちはそわそわしながらも大人しく座ってドアが開くのを待っていた。ドアの向こうから聞こえる物音に、耳と尻尾が反応する。
     ドアはすぐに開いた。イルカが姿を見せ、玄関のドアを大きく開ける。
    「カカシさん。いらっしゃい」
    「イルカ先生、こんにちは」
     カカシが挨拶をすると、お座りしていた忍犬たちは尻を上げてイルカの方へ集まって行った。イルカはその場にしゃがんで、尻尾を振って我先にイルカの顔を舐めようとしている忍犬たちを両腕で抱き留めた。
    「みんなも。来てくれてありがとう」
     イルカは忍犬たちに顔を舐められ、体毛を押しつけられてくすぐったそうに笑っている。イルカは八頭いる忍犬たちを順番に撫で回すと、立ち上がってカカシに手の平を差し出した。カカシの手を握って、玄関の中へとやさしく促す。玄関の土間は狭く、イルカとカカシ、そして忍犬二頭もいれば足の踏み場も無くなる。他の忍犬たちは押し出されるように玄関から部屋に上がったり、玄関の外で待っている。
     イルカは忍犬たちに土足で上がられていても気にせずにカカシを見つめた。狭いので体が近い。
    「カカシさんも。今日はありがとうございます。わがまま言ってすみません」
    「なに言ってるの。今日誕生日でしょ。いくらでもわがまま言ってよ」
     カカシがイルカの腰に腕を回しながらそう答えると、イルカは照れくさそうに笑った。半歩体が近づいて触れ合い、お互いに顔を近づける。唇が触れたかと思った瞬間、二人の足下で忍犬たちが騒いだ。
    「イルカとあそびたーい!」
    「おかしー!」
    「ケーキは!?」
     既に室内に入っていた忍犬たちはぎゃんぎゃん騒ぎ出すわ、玄関の外で待っていた忍犬たちは騒ぎにつられて無理矢理突入してくるわで、イルカは押されて上がり框の段差で尻もちをついた。勿論カカシも一緒にこけることになって框で膝を打った。
     忍犬たちはカカシの横を通って部屋の中へと勝手に入っていく。玄関で大人しく待っていたのは、一番体が大きくおっとりしているブルだけだった。
    「こら! おまえら足汚いまま上がるな!」
     カカシが叱ると忍犬たちは急いで戻って来て二人の前に集まった。一番前にいた忍犬が、足を拭いてくれとイルカの膝に前足を置く。イルカはくすくす笑いながら、玄関に用意してあったタオルで忍犬の足を丁寧に拭った。
    「みんな素敵な格好しているね」
     イルカは一番最後にブルの足を拭いながら言った。ブルは襟のついたベストに蝶ネクタイをしている。
     そこへ先に部屋へ上がっていたグルコが戻って来て、イルカの腕に頭を擦りつけた。首には白い襟と短いネクタイを着けていた。それをイルカに見せるように、自慢げに首を持ち上げる。
    「おれは? おれは?」
    「格好いいね」
     イルカに褒められると、彼は嬉しそうにその場でくるりと回って尻尾を振った。
    「ふふ。みんな、おめかしして来てくれたんだ」
     イルカは立ち上がると、隣に立ったカカシに目を向けて小さく笑った。
    「カカシさんは普通ですね」
     カカシは少しゆったりしたボトムにトレーナーというラフな格好をしていた。イルカの家で寛ぐならこの方がいいと思ったのだ。イルカも同じような服装をしている。
    「俺だけ真面目な格好して来てもしょうがないでしょ。それとも、ちゃんと正装した俺から受け取りたかった?」
     カカシはそう言ってイルカの目の前にブーケを差し出した。小ぶりだけれど明るい色のブーケを見て、イルカが目を丸くしている。
    「俺にですか?」
    「もちろん。誕生日おめでとう、イルカ先生」
    「ありがとうございます」
     イルカはそう言ったが、ブーケには手を伸ばさずにそのまま突っ立っている。受け取ってくれないのかと思っていると、イルカはカカシを見つめて笑った。
    「カカシさん、花束似合いますね」
    「えっ」
     カカシが一瞬戸惑った隙に、イルカは両手を伸ばしてブーケをそっと受け取った。イルカの手に渡った明るく穏やかなブーケは、イルカの笑顔によく似合っていた。
     カカシが黙って見惚れていると、足元から忍犬たちの声が聞こえた。
    「ずるーい!」
    「おれたちもイルカにプレゼントわたすー!」
     忍犬たちが足に頭突きしたり飛びついたりして、カカシに抗議している。イルカはその様子を見て、おかしそうに笑った。
    「みんなからもプレゼント貰えるの? 嬉しいな」
     イルカの言葉は屈託がなかった。はしゃいでいる忍犬たちをやさしく眺めている。
     その後ろで、忍犬の一匹がブーケを入れて持って来た紙袋に頭を突っ込んでいた。薄茶色の尻尾が左右に揺れている。ビスケはガサガサと音を立てながら紙袋から頭を抜き、軽快な爪音と共にイルカの前へと歩いていった。口に何か咥えている。
     忍犬たちは自分たちもイルカにプレゼントを渡したいと言い張り、今日各々の大事なものを持って来たのだった。
     イルカはトコトコ歩いて来た忍犬の前にしゃがむと、忍犬の視線に促されて手のひらを差し出した。ビスケが口をひらく。
     噛み跡だらけのこぶし大のボールが、イルカの手のひらにぽとりと落ちた。
    「誕生日おめでとう。ぼくの宝物あげる」
     イルカは驚いたようだったが、感激しているのがカカシにも分かった。
    「ありがとう。すごく嬉しいよ。あとでみんなで遊ぼうな」
     イルカはビスケを抱き寄せて、たっぷり撫でまわした。薄茶色の尻尾がめいっぱい喜んでいた。
     それを見ていた他の忍犬たちが、次々にイルカへのプレゼントを持っていった。
     彼らのプレゼントは、大きな骨、すべすべの石ころ、ちょっと大きな棒、オモチャのロープやぬいぐるみなどだった。貰ったって困るようなものばかりだ。
     それでもイルカはひとつひとつ喜んで受け取り、忍犬たちを一匹ずつ撫でまわした。忍犬たちは温かいイルカの手にたくさん撫でられて満足している。
     カカシは少し羨ましく思った。自分もブーケを渡した時にキスくらいしたかったのに、結局何も出来なかった。
     まあ、でもいいか……とカカシはイルカと忍犬たちを眺めた。みんな楽しそうにしている。イルカも喜んでいるし、昨日一日苦労して忍犬たちを洗った甲斐もあったということだ。
    カカシの表情も思わず緩んだ。
     最後にイルカの前へ出て行ったのはシバだった。
     彼はイルカの前まで行くと、口を開けてだらしなく笑った。その口元から、チリンと鈴の音がする。
    「誕生日おめでとー、イルカ!」
     喋るたびに小さな鈴の音が響いた。イルカが両手でシバの頬を揉むと、また口がだらしなく開いて舌が口から垂れ下がった。よく見ると、牙にキーホルダーの金具が引っ掛かっている。
     イルカはよだれ塗れになっているそれを、そっと指で取り上げた。小さな鈴と犬のマスコットのキーホルダーに付いていたのは、銀色に輝く何かの鍵だった。
     カカシはぎょっとした。慌てて服のポケットを探る。
    「それ、うちの鍵だろ。いつの間に取ったんだ?」
    「そう! カカシの家のカギ! 大事なものだから、イルカにあげる」
     シバは悪びれもせずに笑った。イルカは、カカシの家の鍵を手に持ったまま困っている。
    「えっと……これ、貰っちゃっていいんですか?」
     イルカはカカシに目を向けたが、それに答えたのはカカシではなく忍犬たちだった。
    「いいだろ」
    「いいよな」
    「いいよ!」
     忍犬たちは口々に無責任な返事をする。「大体、なんでまだ渡してないんだよ」と誰かが言った。「つきあってるんだろ」「さっさと渡せよ」と。余計なお世話だ。
     イルカは一層困って、カカシに助けを求めた。
    「カカシさん……」
     カカシはイルカを見つめて、静かに呼吸をした。
     こんなつもりじゃなかったのに。渡すなら、もっと良い雰囲気の中で、と思っていたのに。そう思いつつ、渡しそびれていたのも確かだけど。
     カカシは息を吐いてから口を開いた。
    「イルカ先生さえ良ければ……持ってて欲しい」
     キーホルダーに付いていた鈴が硬い音を出した。イルカが鍵をキーホルダーごと握りしめたのだ。
    「……持ってます、ずっと」
     どこか照れくさそうな声が返ってくる。その表情は、とても嬉しそうだった。カカシまで嬉しくなって、今すぐイルカを抱きしめたかった。
     イルカは鍵を持って来た忍犬を撫でまわして、ありがとうとお礼を言っていた。ふさふさの尻尾がブンブン動いている。すると他の忍犬たちが、こっちも撫でろとイルカの周りに集まっていた。
    「イルカ先生、その鍵貸して。よだれで濡れてるでしょ。拭くから」
    「あ。はい。お願いします」
     カカシが手を差し出すと、イルカはその手のひらに自分の手を重ねるようにして鍵を渡した。べとべとに濡れた鍵を、手元にあるタオルで包む。さっき忍犬たちの足を拭いたタオルだった。
     鍵ごと水で洗うほうが早いかと考えていると、じっとカカシを見ていたイルカが言った。
    「カカシさんも、うちの鍵いりますか?」
    「えっ?」
    「あっ、でも、きっと使うことないだろうし、要らないですよね!」
     イルカは慌てて言った。
     確かに、この家の鍵を貰ってもカカシは使わないだろう。イルカが在宅している時にしか来ないし、イルカはほぼ里にいるから困らない。必要な時はイルカに借りれば良いし、最悪、鍵が無くても中には入れる。
     でも、欲しいと思った。こんなふうに何かを欲しいと思うのは珍しかった。自分でも少し驚く。
    「俺が持ってていいなら……」
     お守りにしたい、とカカシは答えた。イルカは忍犬を撫でていた手を一瞬止めて、黙り込んだ。耳の先が赤くなっている。
     イルカは撫で待ちしていた忍犬たちに断りを入れると、立ち上がって部屋の奥へ行った。それからすぐ戻って来て、今度はカカシの側にしゃがんだ。
    「な、なくさないでくださいね」
     イルカが鍵をカカシの目の前に翳すように差し出した。
    「……いいの? ありがと、イルカ先生」
     カカシは鍵を受け取ると、拭き終わった自宅の鍵をイルカの手に握らせた。チリン、と小さな鈴の音が鳴る。イルカの手は、カカシの家の鍵を大事そうに握った。
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