真白き夢のリアル 形だけの結婚式をしてからもう一年経ったなんて信じられないけれど、今日は結婚記念日。なんだかくすぐったい響きだ。どう切り出そうかなぁ、悪魔にとって一年経ったくらいなんでもないよなぁ、と考えあぐねていたところ、向こうから「絶対に邪魔されたくない、二人だけで過ごしたいから人間界に行く」と言われたときには驚きやら喜びやらで変な声を出してしまった。口では大人気ないと笑った反面、心の底から嬉しくて涙が出そうになったなんてことは秘密だ。
ロンドンの冬は寒い。晴れることなど殆どなく、小雨はすぐに雪に変わる。うちには暖炉なんて豪華なものはないからなおさら冷える。ヒーターはあるけれど、それよりも窓やドアからの隙間風のほうが厳しかったりする。最近上手く魔力を操れるようになった私は、それを有効活用しない手はないとアロマキャンドルの炎が暖炉のように暖かくなる魔法を使っている。おかげで心地よく暮らせるようになった。人間界で魔法を使いすぎるのはよくないが、このくらい許容範囲だ。これならルシファーが来ても寒くないだろう。
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