ありがとう見上げることも当たり前になった
いつまでも揶揄われる身長もそれはそれでいいじゃないかと思うようになった
あの頃からかわらない呼び方に今でも心弾ませているのは秘密にしている
今日も明日も
名前を呼べば、なぁに?と首を傾げながらわざわざ背を曲げて返事をくれる
そこまで気を使わなくても大丈夫ですよ、いつだったか伝えたことがあった
「俺が顔みたいから」
そう返ってきた言葉に耳まで赤くしていたあの頃
今はもう慣れ親しんでしまった仕草に顔色をかえることはない
日常に溶け込む当たり前が増えていく度に、心があったかくなる
ここに引っ越してきた日に、この気持ちを言葉にした
その時に向けられたあの顔が忘れられない
時より思い出しては口元が緩む
その度に、何かいい事あった?と、聞いてくるので秘密ですとキスを贈るのも習慣になった
出会った頃は、言葉にしないと伝わらない、そう思っていた
だけど今は少し違う
目を見たらわかるよ、そう言われることが多くなった
目は口ほどに物を言うとは、こういうことなのか
だけど今日はあえて言葉にして伝えよう
あの頃からちっとも縮まらなかった身長差も今はほんの数センチの距離
目の前にある顔は今日も優しく微笑んでくれる
あぁ、その顔がみたかったんです
「秀鳴さん、」