エンシオディスは時折、夜半にうなされている。大声を出すというよりは悲しげに、か細い呻き声を出す。
優しい情事のあとは身体が熱っぽくて、直ぐ眠れない夜がドクターにはあった。エンシオディスは不眠気味の妻に付き合ってくれるのだが、毎度毎度だと申し訳ないなと感じる。
ある夜またもや眠れず、くだらない話をつらつらとこぼしていた時だった。珍しく寝落ちした夫を眺めていたら、苦しげにうなされていたのだ。
睡眠を取る瞬間は、どんな生き物でも素の状態になるという。故に苦しい思い出や、悲しみなどが出て来やすいと聞く。
最強な俺様系夫であるエンシオディス。態度と図体は充分な程デカいけど、子供の時分に押し込めた負の感情が眠る刹那に溢れるのだろうか。
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