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    マフィア要素は添えるだけなマフィアパロアシュグレ(途中)

    #アシュグレ
    ashGray

    fog and smoke伸ばした指の先さえ見えなくなる濃霧の夜をひとり、グレイは歩いてゆく。
     歓楽街はまだ人で賑わっているであろう時刻だが、郊外の通りにはすれ違う人影さえ無い。辺りの屋敷はほとんど中世に貴族達が建てた文化財レベルの建築物で、改装にたっぷり金を注ぎ込める富裕層の別宅として当時の栄華を留めている。
     今夜グレイが呼びつけられたのも、建てられてから二世紀ほど経ていそうな瀟洒な石造りの邸宅だった。
    「……来ました」
    『入れ』
     古風な石柱に埋め込まれたインターホンに呟くと、マイク越しでも傲岸に響く声が短く応える。厳めしい鉄の門扉は軋みもせず開き、静かにグレイを飲み込んだ。
     シャンデリアが照らす広い玄関ホールには細身の老紳士がただ一人。グレイの姿を認めると無言で深く頭を垂れ、真っすぐ伸ばした燕尾服の背を向けて屋敷の奥へと歩み出す。こちらの素性も来訪の目的も全てインプットされた精巧な機械のような案内に、グレイもまた無言のままに従った。
     厚い絨毯に一歩ごと沈む足取りは自然と重くなる。爪先に力を込めて歩けば、どこまでも続くかに思えた真紅の廊下は獅子の意匠が彫られたひときわ華美な扉の前で途切れた。
     言われなくともこの先が屋敷の最奥、家主の最も私的な空間であることは一目瞭然。老紳士が恭しく開いた扉の向こうへと、グレイは身体を滑り込ませる。
     時代錯誤な天蓋付きのベッドもしっくり似合う豪奢な寝屋。オレンジ色の柔らかな光の中で、短く刈った銀灰色の頭髪に鋭い目付きの男が低く笑った。
    「テメェがここに来たって事は、取引は成立だな。キッドマンの右腕」
     この街の裏社会に君臨するファミリア・キッドマンの構成員、『ドン・キッドマンの影の右腕』グレイ。
    「ええ……我々は貴方たち警察への協力をお約束します、オルブライト長官」
     マフィアの脅威から国民を守る国家警察庁の若き長官、アッシュ・オルブライト。
     裏と表の対極に存在する男が二人、同じ部屋で向かい合う。
     基本的に相容れぬマフィアと警察だが、顔を見ればすわ殺し合いという訳でもない。どちらかが滅ぶまで血を流し合ったところで無益だと、お互いとうに分かっているからだ。警察は表の、マフィアは裏の秩序を保つため、時には秘密裡に手を組むこともある。
    「あのキッドマンが、テメェを手放すとはな」
    「……薬の件は、ドンも早期解決を望んでいますので」
     海外の犯罪組織がこの街に持ち込み出した強力なドラッグは警察のみならず、裏社会の危ういパワーバランスを乱されたくないマフィア達にとっても早急に排除したい悩みの種となっていた。
     特にこの街で最大勢力を誇るファミリア・キッドマンのドンは、裏社会の危険に善良な一般人が巻き込まれるのを嫌う。幹部から構成員まで腕利きを揃えながらも警察と派手にやり合った事は一度もなく、むしろ貧民街での慈善活動を頻繁に行っているからか一部の市民達からはまるでヒーローのように慕われている。ブラックマーケットの奥まで潜り込んだ薬物を見つけ出す為に、警察が協力を持ち掛けるには最適な相手と言えた。
     しかし、いかにファミリア・キッドマンが比較的穏健な組織とは言えマフィアであることに変わりはない。庁内に渦巻く不安と不信の声を鎮めるためにと、アッシュは協力の条件を提示した。『事件が片付くまで、ドンの右腕の身柄を寄越せ』と。 
     なんだそんな事か、とグレイは心から安堵した。 
     相談役のブラッドや『双璧』と称される若頭のディノやキースの身柄を押さえられたなら戦力的な痛手を被るだけでなく、ドン・キッドマンが警察に屈して幹部を差し出したというマイナスイメージがついてしまう。他のマフィア達の暴走を防ぐためにも、ドンの絶対的なカリスマ性は決して揺らがせてはならない。
     その点、グレイは正式には何の役職にも就いていないただの構成員だ。ファミリーの中でさえ幹部以外にはただの秘書だと思われているくらいに、圧倒的な存在感を放つドンの傍にひっそり控える地味な男を『ドンの影の右腕』と結びつける者は少ない。
    「分かってんだろうな? 事前に伝えた通り、条件を受け入れたからには今からテメェは俺の支配下だ。俺の指示には全て従ってもらうぞ」
     つかつかと歩み寄ってきた男の手が伸び、節くれだった指に荒っぽく顎を掴まれるのをグレイは身じろぎもせず受け入れた。
    「……はい。こちらもお伝えした通り、我々の仕事に干渉しないのであれば、僕は貴方の下で見聞きしたあらゆる事を一切ドンに報告しません」
     従順に頷くグレイを値踏みするように眺めて、男は背負う肩書に似つかわしくない獰猛な笑いを浮かべて手を退ける。
    「ハッ、殊勝な心掛けだな」
     身を翻し、王座にふんぞり返る暴君のようにどっかりベッドに腰掛けて、男は最初の命令を短く吐いた。
    「脱げ」
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