『オヤスミ』 ――ピチャン。ピチャン。
よく研がれたナイフの切っ先。そこからは、液体が滴って床に赤い水溜りを作っている。
同様に、止めることも叶わずに己の身体から流れ出していくそれが足元に溜まっていく。
体当たりをされたかのような、どすんと重い衝撃。
それを受け止めるように肩を掴んで、けれど身体に深く何かが突き刺さるような違和感を覚えた。
次に訪れたのは内部にめり込んだそれが肉に引っかかりながらも無理矢理に引き抜かれる鮮烈な痛み。
そうして今は、痛みを飛び越えて燃えるような熱さと疼きが、手のひらの下でじくじくとしている。
いったい、なにが起こった。――そう考えるよりも前に、カランと音がする。
「……あ……」
ふらふらとよろめきながら、さながら幽霊のように青ざめた男の薄く開いた唇はかたかたと震えて。吐息のようにか細い声を漏らす。
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