2025-05-21
砂礫の上を馬が馬車を引いてざくざくと歩く。時折岩を噛んで大きく揺れるが、それ以外に大した変化もない。砂と岩と枯れた木々。岩に張り付いた苔と高く晴れた空だけが色を持つ世界だ。
ジョウストンとトランを結ぶさびれた街道の一つを行く隊商に拾ってもらったのは僥倖だった。護衛を雇って道々の街をめぐりながら、ジョウストンへ帰るのだという。そこに俺ともう一人乗せてもらって砂漠の旅の空だ。腹に開いた穴がようやく塞がっただけのフリックに、この砂漠を歩いて超える体力があるとは到底思えなかった。
今だって、ぼんやりと剣を抱えてどこか遠くを見ている。まあ何も見てはいないんだろうな。ちょっと熱でも出してそうで怖い。そんな怖い人間を抱えて、砂漠を渡ろうなんてやっぱり無謀なんだよな。
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