願を掛ける「いつまで伸ばすんだ?」
朝日が昇り、少しずつ部屋の空気が徐々に温まる頃。
ヒカゲとヒナタの髪を梳いた紅丸が、珍しく「お前のもやってやる」と着替えを用意する紺炉の後ろに腰を下ろした。
特に断る理由もなく任せると、普段のぶっきらぼうさからは想像がつかないほど丁寧に丁寧に髪を梳かれた。
これは毎日相当ヒカゲとヒナタに言われてるなと想像して微笑ましくなっていたところに、静かに疑問が溢されたのだ。
まだ紅丸が幼かった頃は短かった。
何か理由があるのかと聞きたげな声音に、ふと昔のことを思い出した。
「鬱陶しい。いい加減切らねえか」
そう言われたのは、もう何年前になるだろうか。
*
葉桜の青が眩しい頃、徐々に夏へ向かうよく晴れた日だったと思う。
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