石乙散文「憂太、これあげる」
僕の顔を見るなり、五条先生がひとつのぬいぐるみをポスンと渡してきた、それは。
「……何ですかこれ」
「ん?ぬいぐるみ」
「いや、それは分かるんですけど……誰かに似てません?」
サイズは30センチくらいで抱えるくらいの大きさだ。そして頭身を二頭身でデフォルメされているが、素肌に白のファーが付いた黒いジャケットを着ていたり、頭頂部からにゅっと伸びてる髪といい、目元にちょんちょんと付いた睫毛といい。
その特徴は明らかに、石流さんを模していると思った。
それに気付いているのかいないのか五条先生は「さぁ~~誰だろうね」なんて笑って言ってくる。
「これはちょっとした呪骸のテストなんだ」
「呪骸の?つまりこれはただのぬいぐるみではないってことですか?」
1939