長夜の静寂「ん?」
ココが脱衣所から廊下に出ると、広間の奥から冷たい風が流れてきた。風呂で温まったばかりの身体に、冬の冷気が刺さる。
誰かが縁側の雨戸を開けたのだろうか。
「まったくもう……あ」
誰にしろこんな真冬の夜に戸を開けるなんて、とその誰かに文句を言いながら角を曲がる。
ココの予想通り雨戸は開いていた。予想外だったのは、そこにいた人物だった。
驚き足を一瞬止め、今度は静かにその人物に近付く。雨戸の外を眺めていた人物、日天はココがそばに来るのに気付かない。
日天の真後ろまで行くと、ココは目の前の身体を抱き締めた。
「寒くない?」
「わっ、……何だ、ココか」
ビックリしただろ、と軽く睨まれるが本気で怒っていないのは分かっている。
920