ふぇら 日付が変わろうとしている深夜。とあるマンションの一室。そこでは二人の男が、甘く官能的な時間を過ごそうとしていた。寝室の照明は付いているものの薄暗く、二人の間に影を落とす。
ベッドボードと雪平に挟まれる形になった日天は、まさに逃げ場が無いと言った感じで雪平からの口づけを受け入れていた。
「ん……ふ、ぅ……」
触れては離れていく度に、リップ音が鳴る。ワザと大きくたてられるそれに、日天は口からだけでなく耳からも官能を掻き立てられていた。
雪平と恋人になって一ヶ月が経つ。その間こう言ったキスは幾度となくやってきたが、何度やっても慣れなかった。相変わらず鼻から息を吸うのを忘れるし、何も出来ずにただただ雪平の唇と舌に翻弄される。今日もそうだ。
息苦しさを感じ漸く鼻から呼吸をする日天のすぐ近くで、雪平がふふ、と笑う気配がする。
「可愛い、日天くん……」
吐息交じりの艶のある声が囁くように言う。
「っ……可愛い、とか、言うな……」
成人した男で、筋肉もそれなりに付いている自信がある。華奢な訳でも、なよなよしくもない。そんな男がキス程度で狼狽している様は、可愛いよりも可笑しいと表現するのが適切ではないかと日天は思う。
しかし雪平は本気でそう思っているらしく、よく可愛いと言ってくるのだ。
「……うん、ごめんね。……ね、続き、しても良い?」
「……ん」
全く悪びれた様子もなく謝る雪平が次の行為を促せば、日天も頷き自ら服を脱ぎ始める。