天国と地獄伊黒は地獄に落ちた。自らが望んでのことである。
「で、キミは何を償いにココへきたの?」
「親族を見殺しにして、己だけが生き延びたことだ」
「フーン………」
童磨は手元の帳面を見た。
伊黒小芭内、見覚えのある制服から鬼殺隊であることは一目で分かったが、その中でも最高位の柱である。
生い立ちからザッと目を通しても、童磨には伊黒に落ち度があるとは思えなかった。前提として、善悪を客観的に判断する能力が欠落しているということもある。
ここは死後、軽犯罪を犯した者と天上に行くことを躊躇う者が寄越される地獄である。伊黒はもちろん後者だ。
「御免ね、次が来たみたい。キミはちょっと脇に退いてくれる」
「はっ?」
伊黒の後ろには青白い顔をした女性が立っていた。年端のいかない容姿から、まだ成人もしていないように見受けられる。
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