🇨🇭🐍🐏にまつわるお気持ち表明限界界隈に突然光がやってきた。
メイさんである。
よごれとまめちゃは眩しさに目を細め、次いで瞼を擦った。幻覚かと思ったのだ。
「自由自在な飛び方が二次創作の醍醐味ですよね…♡」
字書きは同時に生唾を飲んだ。だってこの二人、〈二次創作は可能性の追求〉を盾に、エロトラップダンジョンとかいうおばみつ界では聞き得ないワードを持ち出したり、原作で出会ってもいないカップリングで蛇を右にしたりと、ただでさえグレーな二次創作の世界でグレーの限界を極めるタイプのオタクである。まさに全てが限界なのだ。
そこにやってきたメイさんというお方、おばみつ界でハートウォーミングな作品をつくらせたら右に出る者がいないような、とにかく凄い絵描きだった。カトリックでいうところのローマ教皇、法律でいうところの六法全書みたいなひとである。
「🇨🇭🐍🐏楽しいね、みんなもきっと好きじゃないかな」
「書いてくれたら添えさせてください♡」
うふうふと、澄み渡るようにメイさんは言う。
よごれとまめちゃは声高に掲げていたメガホンをスッと下ろし、正気になった。スイス人のおじいさん視点で酪農をする🐍──混沌でしかない。
先程までナハナハ笑って盛り上がっていたけれど、字書きでありながら言葉を失ってしまった。
だってメイさん、『この話からそう切り取ってくるの天才なのか?』というような爽やかで自然な絵を仕上げてくるに決まっている。その横で自身のよく分からない作品を抱え、どのような表情で立っていれば良いのだろう。それが分からないから二人は顔で笑って心で泣いているのだ。
でも、メイさんの絵は見たい。これは蛇最推し界すべてのひとの願いでもある。だから二人はどちらが書くべきかの押し付け合いをし始めた。どれだけ表で綺麗に洗っていても裏では汚れているしまめちゃなんて耳触りは可愛い名前も、その実、実家の猫をまめにするかチャコにするかで揉めた結果生まれたような名前なのだ。こうなることは想像に容易い。
しかし、メイさんはそんな二人を目の当たりにしても『どうぞお気になさらず…』と典雅である。多分、ご本人は気付いていないのだ。いちばんの🐏はメイさん自身であり、迷える子羊となってしまっていることを…二人は声にこそ出さないが〈どうすんの? こんなとこに来ていい人じゃないんだけど〉〈ミミズで鯛が釣れちゃった気分〉と心臓に汗をかいている。
「とてつもなく読みたいですね。泣きながら笛吹いて、牧羊犬動かす🐍なんて最高」
書けないんですけど、描いてください。
字書き二人はついに土下座した。
─完ー