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    mame_cha_cha_ch

    @mame_cha_cha_ch

    基本おばみつですが、腐っているものもあります。
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    mame_cha_cha_ch

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    【腐】🌈🐍
    いちさんのファンアートに付随したお話。
    極楽遊戯 童磨視点
    羅生門は追い剥ぎの話でしたね……

    ##童蛇

    轍(わだち)馬鹿な女だった。
    筋肉の凝りを自覚して首元を指先で解す。
    夫に愛人がいたからと、俺に抱かれて何の解決になるのだろう。まぁ、抱けと言われたらそうするし、相手の欲しがるまま優しくするのが俺の仕事だけれど。
    煙草が吸いたい一心で自室の扉を開ければ、来客があった。

    「来てたんだ」

    いつも君と呼んでいるから咄嗟に名前が出てこない。名は確か伊黒小芭内と言っていた気がする。
    外に向けて解放してあるこの寺は、ときにこういう居候がある。何かが欠けていたり、生活が立ち行かなくなった者たちだ。来る者拒まず去る者も追わないので、その顔ぶれは季節みたいに移ろっていく。毎年の桜を区別しないように彼らの顔もまた思い出せない。

    「舞姫は面白かった?」
    「読者の気分を悪くするだけに作られたような話だな」

    そういえばこの男は何も欠けていない。であるのに、本しかないこの部屋にやってくる。読書家なのだろうか。それにしては即物的な感想ばかり口にするけれど。
    ただ何となく首筋に絡まれば、眉間の皺を深めて迷惑そうな素振りをみせる。しかし振り払いはしない。舞姫にはすでに興味を失っているようなので、床に置かれたそれを近くの山積みに戻して腰掛けた。その傍ら煙草を手探る。

    「またお前は適当に。これでは続きを読みたくなっても見つけられんだろう」
    「純文学なんて押し並べて屑の話ばかりだし、他のを読めばいいじゃない。全部同じだよ」

    ちょうど視線の先に羅生門があったので、投げて寄越してやる。主人公が追い剥ぎになる話だったと記憶している。教材として汎用されているが、情操教育の指南書としてどうなのだろう。
    ベッドの下に新しい煙草を見つけた。殆ど同時にテーブルの上にも封を切ったものが目に入ったが、手近な新品を選択する。

    「……そういう問題ではなかろう。まぁ、いい、お前に何を言っても無駄だ」
    「ん、そう? 解決したなら良かった」

    煙草に火をつけて肺の底まで吸い込んだ。枯渇した細胞に水が行き渡るみたいに身体が楽になる。無人島に持って行くなら、俺は水より煙草だなぁと紫煙を吐き出してボンヤリとする。

    「…………それにしても」
    「ん?」

    深刻な声色に、隣を見遣った。

    「憑き物が取れたように清々しい顔だな」

    一拍、意味が分からなかったが嗚呼と合点した。『お盛んでしたね』と言われているらしい。確かに女はちょっと心配してしまうくらいに感じ入っていた。品がないなぁとは感じたが、その分早く片付いたから俺としては楽な仕事だった。精神とはまた別に、男の身体は順応するし事が終われば軽くなる。
    そう返せば、今度は煙草が増えたのではと言う。

    「……体に毒だぞ」

    それなのに視線で灰皿を探していると、間髪入れずに差し出してくるから人の心は複雑だ。
    大理石でできたそれに火点を押し付け、ふと灰皿の底面を見たのは久しぶりだと思う。吸い殻を捨て、洗ってくれたらしい。
    具体的に生活するのが苦手だ。幼少の頃から甲斐甲斐しく世話をされるのが当然であったし、学生の時分もそれで通ってきた。但し、何かしら見返りは求められたが。欲しいものが分からなければ抱いておいた。それで相手が納得しなかったことはなかったし、この男にもそれで通っている。

    「毒かぁ〜いいねぇ、これから毒だと思って吸うことにするよ」
    「早死するぞ」
    「それも悪くないね」

    美しいまま死ねるなら本望だ。変化は殆どの場合劣化だ、そう言ったのは誰だったろう。俺は美しいものが好きだし、俺に取り巻きが絶えないのも多分、同じ理由だと思う。
    容姿端麗はつまり遺伝子が優秀ということ。俺は機微に明るくないから、人格より正確な指標だ。
    そして目の前のこの男は美しい。

    「君さ、凄く綺麗な顔をしているのにどうして隠しているの」

    言葉に詰まるその顎を掬い、マスクを外してやる。この瞬間が俺は好きだ。美術品を覆う暗幕を取り払うような気分になる。
    白樺のように綺麗な相貌が露わになった。

    「………相変わらず不躾な奴だ」
    「ん〜?」

    微笑みを作ればそれ以上は何も言われなかった。相手の言っていることが理解できないときは、言葉をあやふやにして笑ってさえおけばいい。
    彼の眼球が光に透けて緑を帯びる。一筆書きのように流れる目尻も、すっと通った鼻筋も均整がよくとれている。白肌にしなやかな黒髪が映える。
    薄くかたちの良い唇に親指で触れた。俺の掌と並ぶと、その顔のちいささが際立つ。

    「………っ、急になんだ」

    羅生門も取り上げ、脇に放る。
    今度は場所が分からなくなると文句は言われなかった。

    「柔らかいねぇ〜」
    「フン、悪趣味な」

    唇の感触を確かめるように触れ、少し白くなるまで圧をかける。さらに綺麗な歯列を指でなぞると、生暖かい吐息が指先を掠めた。呼吸し辛いのだろう、空気を取り込むように白い歯の奥に赤い粘膜を覗かせる。
    この男は白の純度が高い。静脈が浮かぶ透明な肌は月のようで、生娘にも劣らない。だからこそ服をひん剥いて粘膜を暴いてやりたくなる。それは雪の中に落ちる血痕のように鮮やかで美しい。

    ──どうしたどうした?

    愉快な夜だった。あれは誰の記憶だろう。
    距離を詰めるついでに、前が膨らんでいたのを膝で軽く刺激してやる。

    「………っぅ、」

    苦悶にも似た表情が俺を得も言われぬ気持ちにさせた。喚き散らしたりしないところも気に入っている。慎ましやかで、上品だ。
    時折り、壊したい衝動に駆られるが永く使いたいなら大切にしなければ。幼少の頃、加減が分からず好きな玩具が壊れたときは悲しかったものだ。

    「自分で上がれる?」

    ベッドに移動して、その身体に跨った。生まれたての雪景色に轍をつけるように、舌を転す。
    踏み荒らされた泥道になるところも見たいなぁ、と思いながら丁寧に扱った。俺は優しいから。

    ─完─
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