嘘日も出ていないのにいつまでも暑さが消えない夏の夜、身体にひっつくヒーロースーツがやけに気持ち悪く感じた。
ここ最近、この町では細々とした事件が多発していた。そのどれもが深夜の犯行だという。ヒーローの警備体制を強固にしようと考えたものの、以前は犯罪件数が少なかったこの町には大した数のヒーローはいない。よって現在雄英に務めてはいるが担任をもっていない自身が救援に呼ばれた。
住民はとうに寝床についたのか、人のいない道を歩く。
「こんばんは」
背後から聞こえた声に反射的に捕縛布を掴んで振り向いた。
「......こんばんは、良い子はもう寝る時間だぞ」
そこにいたのはにこりと愛想のいい笑顔をうかべた少年だった。
自信に一切気づかれることなく背後に近づき声をかけた少年に警戒心を抱く。
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