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    担任を持つ前の雄英教師相澤×連合のお迎えを待ってるヴィランデクくんの相出

    3ヶ月前から進まないので供養

    日も出ていないのにいつまでも暑さが消えない夏の夜、身体にひっつくヒーロースーツがやけに気持ち悪く感じた。
    ここ最近、この町では細々とした事件が多発していた。そのどれもが深夜の犯行だという。ヒーローの警備体制を強固にしようと考えたものの、以前は犯罪件数が少なかったこの町には大した数のヒーローはいない。よって現在雄英に務めてはいるが担任をもっていない自身が救援に呼ばれた。
    住民はとうに寝床についたのか、人のいない道を歩く。

    「こんばんは」

    背後から聞こえた声に反射的に捕縛布を掴んで振り向いた。

    「......こんばんは、良い子はもう寝る時間だぞ」

    そこにいたのはにこりと愛想のいい笑顔をうかべた少年だった。
    自信に一切気づかれることなく背後に近づき声をかけた少年に警戒心を抱く。

    「んふ、ごめんなさい。僕悪い子なんです」

    街頭の少ない暗い道で、緑の瞳が光って見えた。



    「中学生か?何時だと思ってる、補導対象だぞ」
    「でもヒーローにはできませんよね、補導」

    少年の年齢を推測するとヒーローだと指摘される。握った捕縛布を話すことなく話を続けた。

    「へぇ、俺がヒーローだって分かるのか」
    「もちろん!イレイザーヘッドはあまり情報が出回らなくて現場も見に行けないし、本物に出会えるなんて僕ラッキーですね!」

    きらきらと瞳を輝かせて大きい手振りでイレイザーヘッドを語り出す少年、その捕縛布は〜ゴーグルは〜、と喋る少年の声を聞いているうちになんだか毒気を抜かれてしまった。

    「分かった、分かったって。こんなオジサンのファンなんかになってくれてありがとね。
    で、おうちは?」
    「イレイザーヘッドはプレゼントマイクと同期ってほんとなんですか?仲良しなんですか?」

    ダメだ、こいつ聞いちゃいない。

    「......答えたら帰るか?知ってるだろうけどこの辺は最近危ないんだよ。そもそも子供が深夜に外出するな」
    「あ、ミッドナイトとインターン先が一緒だったっていうのは本当ですか?」

    なんか腹たってきたなこいつ。
    むに、とやわらかいほっぺを片手で挟んだ。

    「ひたひでふ」
    「ふはっ」

    唇を突き出したまま喋る少年に笑ってしまった。



    「それで、非行少年くんが帰らない理由は?」

    自販機で買ったりんごジュースを握らせベンチに隣り合わせに座った。
    少年が話しだすまで缶コーヒーを飲んで待つ。

    「......非行少年くんじゃないです、デクですよ」
    「デク?本名か?」
    「木偶の坊って言うじゃないですか、あのデクです。」
    「......こう言っちゃなんだが、名付けたやつはセンスねえな」
    「......本当に、僕もそう思います」

    さっきまでのキラキラとした瞳はどこに置いてきたのか、眉を寄せて瞼を少し伏せたまま少年、デクは自身を笑っていた。
    気まずさを覚えた俺の言葉に何かを飲み込むような同意をしたデクはジュースを一口飲んで俺を見た。

    「ねえ、イレイザーヘッドはどうしてヒーローをやってるんですか?」

    純粋な何も他意の混ざっていない声だった。

    「ヒーローって危険な仕事を代償に名声を手に入れる、そういう仕組みだと思うんですよね。でもイレイザーの活動の仕方は他人の評価を気にしない動き方で、何を目当てにやってるんまろうなって」
    「何を目当てに、ね」
    「僕にはヒーローがすごくかっこよく見える。でもヒーローがどうしてヒーローを選ぶのか分からない、ヒーローの本質が分からない。
    僕は知りたがりだから聞いてみたくなっちゃって」
    「そんなの人それぞれだよ。お前の言った通り名声や金を求めるやつもいる、憧れだけで走れる奴もいる。」
    「あなたは?」
    「......覚えてないよ」
    「嘘つき」

    無垢な瞳がじっと俺を見つめる。居心地が悪くなって缶に口をつけた。一口目より苦いコーヒーを飲む。

    「大人っていうのはみんな嘘つきなんだよ」
    「ずるいです」
    「上等」

    口を尖らせたデクはこの話題に俺から返事が貰えないことを感じ取ったのか小さくため息を吐いた。



    互いの手の中の缶が汗をかき終わった頃、デクが徐に立ち上がった。

    「お話、聞いてくれてありがとうございました。」
    「帰る気になったか?」
    「お迎えを待ってたんですけど、帰った方が早そうなので」
    「送っていこうか」
    「歩いてすぐなので大丈夫ですよ」
    「そうか、何かあったらでかい声で呼べよ。すぐ向かう」

    忘れられたら困るが今この町は犯罪が多い、一人で帰すのには少し抵抗があるがいらないと言う。自分は暫くこの辺りを廻る予定だし、とデクに伝えた。

    「本当に来てくれるんですか?」
    「?、ああ」
    「......嬉しい、何かあったら呼びますね」

    大きな目を零れそうなほど開いて俺に問うデクに返事をすると、デクはきらきらと瞳を輝かせ、顔を紅く染めて笑った。
    あまりの眩しさに俺の視界にも星がちかりと瞬いた。


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    満ツ雪

    DONE俳優澤×ドル出勝手に書きました。すみません。え、ドル出が鈍すぎて俳優澤はいつまでも出くんとくっつくことができないんですか?ごめんなさい、もうくっつけちゃいました…ごめんなさい。
    俳優澤とドル出のお話『テレビ局の地下駐車場にいるよ』

    そんなメッセージをもらって僕は私物のパーカーを引っ掴んで慌てて走り出した。派手なステージ衣装のままだし、髪も瞼もキラキラしたままだけど、とにかく時間が惜しくて全力で走った。でもテレビ局は騒々しいから誰も僕のことなんか気にも留めない。おはようございます、お疲れ様ですって笑って挨拶しながら人の波をくぐり抜ける。もう1ヶ月も会っていないあの人の元へ急ぐため。

    ハア、ハアって息が上がる。
    さすがに駐車場だと真っ青な衣装の僕は悪目立ちする。荷物を搬入しようとしているスタッフさんたちがチラチラとこっちを見てくるから、パーカーの前を掻き合わせながら足早にその場を後にした。
    相澤さんの車は、柱の影になって一段と暗い一角に停まっていた。黒い二人乗りの、車種に詳しくない僕でも名前を聞いたことがある車。壁に向かって前向きに駐車されているから車内が見えなくて、何度もナンバープレートを確認してから助手席の窓をそっと覗き込んだ。
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