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    ant_sub_borw

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    ant_sub_borw

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    テスカトリポカの伝承保菌者デイビット君のSCP案件お仕事小話
    同じ設定で書いてる他のものと世界観繋がってます
    伝承科の内情やらSCP的な宇宙の脅威とか捏造あり

    誤飲-S.Syndrome個人用集中治療室を埋め尽くさんばかりの医療機器。
    部屋の真ん中に鎮座するベッド、そこに横たえられているのは、幼い少女の体だった。
    未成熟な体の至る所には、機器類と肉体とを繋げる無数のコードが括りつけられている。そのいずれもが、頼りない命を繋ぐ文字通りの生命線だった。
    目を見開いたまま横たわり、一切微動だにしない少女。計器のたてる等間隔の電子音のみが、彼女が生存していることを保障している。
    シーツに放射状に散らばる栗色の髪。その隙間さえ縫う勢いで、びっしりと張り巡らされたコード。
    魔術回路のようだ、と一目見た時、そんな所感を抱いた。


    少女は当初、両親に原因不明の腹痛を訴えた。
    時間帯を考慮し一晩様子を見たものの、翌日になっても症状は改善されず、どころか悪化していた。
    少女の両親が車で最も近い総合病院まで彼女を連れていく合間も、少女の容態は刻一刻と悪化し、病院につく頃には血圧の急低下、その他様々な症状によるショック状態を引き起こし、意識もなくなっていた。
    すぐさま検査と応急処置が行われたが、そこで思いもよらない『異常』が発見され、その『異常』を感知した関係者により、伝承科に協力要請、もとい事態の収拾依頼が舞い込んだ。そういう流れだった。
    食道の一部、胃、十二指腸、小腸の一部。少女の体内にあるそれらの臓器は、切り取られたかのように消失していた。
    引き起こされている症状から見て消失、と表現しているが、その部位にあたる個所にはなんらかの力が働き、物理的な質量が減っているわけではない。ただ、いかなる医療的なスキャニングをかけても、そこにあるべき臓器の形は見当たらない。そして、あるべき臓器が果たす役割も負っていない。それゆえに少女は、自力での健全な生命活動が不可能になっていた。
    デイビットがその案件を引き取ったとき、事態はより悪いほうへ動いていた。進行度はごくわずかながら、原因不明の『消失』減少は徐々に彼女の肉体を侵食しているという。体の内側から、末端に向かってじわじわと。
    少女は最初に運び込まれた総合病院から、特定のより大きな病院へと転院させられていた。現場に到着し受付には寄らず、病室を目指して廊下を進む。
    たどり着いた現場には、絶望したような面持ちで、肩を抱き合いさめざめとなく少女の両親がいた。廊下に立ちつくすその横を通り抜け、治療室の中に入る。咎めるような視線が背中に突き刺さったが、すぐさま駆け付けた訳知りの病院スタッフが、二人に事情説明を始めた。
    構わずベッドの前に歩み寄り、少女の体を観察する。事前資料を読んだ段階でいくつか見当をつけていた原因。それを確認するには少女の体を見る必要があると思い、伝承科の持つ権限を駆使して病室にやってきたという経緯だ。医師が診断を下すのに、患部を見る必要があるのと同じように。
    魔術回路と閃いたのは、はっきりとした根拠のない直感だった。
    入院患者が着る、簡易な作りの検査着。見た目に変化はないが、その皮膚の下には未知の減少が進行形で潜んでいる。
    持ち込んだ資料に目を通す。ここに来るまでの間に可能な限り調べた、少女とその家族の『食事内容』。ピンポイントで、少女が腹痛を訴える直前の夕食と間食の類のリストだ。
    内容には、一見しただけでおかしいと思うような物は含まれていない。この辺りはでは定番のマッケンチーズに、タマネギとラディッシュを混ぜてアレンジしたもの。市販のパンに茹でたソーセージの付け合わせというメニューだ。
    間食についても、パンを買った店で共に購入したベリージャムとアーモンドのタルトのみ。それ以外はミネラルウォーターといった一般的な飲み物しか摂取しいていないようだ。パンを購入した店などには別途探りをかけているが、これの調査があがってくるのはもう少し時間がかかるだろう。
    原因を突き止めるのはそこで一度中断し、現象をより詳しく明らかにすることへと思考を切り替える。
    少女の体で、コードが密集していない足に注目する。簡単かつ最も規模の小さい治療魔法をそこへ施すと、魔術に反応して少女の体に魔術回路が浮かび上がった。
    正しくは、人体に元より流れるメジャーな流動体、血液などを運ぶ血管以外の、一般人には備わっていないはずの回路。それは魔術師に馴染み深い魔術回路ではなく、体液でも魔力でもない、電気を直接運ぶ管だった。
    魔力を感知したそれは微弱な静電気反応を起こし、流し込まれた魔力を電気変換し体に取り込んだようだ。静電気を警戒して魔術を中断し、一度腕を組み考えこむ。
    当然、人体にそんな機能が元から備わっているはずがない。であればこれが、異常現象解明の手がかりだ。
    数秒目を閉じて悩み、次に何気なく目をあけ、一度背後を振り返る。そこにはまだ少女の両親が立っていた。母親のほうの手には、小さな花束とそこに添えられた写真。写っているのは同じ年ごろに見える数名の少女たち。そのうちの一人は、どうやらこの場にいる被害者のようだ。
    「やるか」
    自らを奮い立たせるよう、他に誰もいない病室で呟く。先ほどは片手だったが、今度は両手を少女の体にかざし、物質を鑑定する類の魔術を行使する。規模は当然ながら、先ほどの治療魔術より遥かに大きい。
    目に見えて明らかなほど、少女の体に異変が起きる。デイビットの両手のひらと肉体との間を無数の電流がばちばちと奔る。
    異常を検知した医療機器類が次々とアラートを発し、治療室はにわかに騒がしくなる。病変を感知して、専門の医師や看護師たちが続々と部屋の前に集まってきた。
    担当医師の一人が慌てた様子で入室してきたところで、魔術を中断させる。間一髪、デイビットの目的は達成できていた。
    「キミ、一体何を……」
    非難するような声音と表情の医師。肩を掴まれ素直に目線を合わせ、痺れと経度の火傷のような症状に痛む手のひらをさすりながら答えた。
    「原因調査だ。対処法は概ね、今ので判明している」
    何が起こったかわからず騒然としている医師たちを尻目に、ポケットを探って小さな箱を取りだした。この手の調査には欠かせず、己が己であるための楔。起源と肉体、記憶と現実の存在とを結びつけるために必要なもの。
    「明日の夜までに準備を整え、彼女の体の異変を解決する。ここに喫煙所はあるか?」
    予想通り、怪訝そうな顔で黙り込むという反応が返ってくる。
    その後ろから、唖然とする医師たちをかき分けるよう、訳知りのスタッフが駆け寄ってきた。





    伝承科は普段、その他の学科と積極的な交流をすることが少ない。とはいえ同じ組織に属している扱いではあるため、接触しようと思えば存外それは簡単に叶えられる。
    教授の一人に口利きをしてもらい、『儀式』に使う黒曜石のナイフに魔術を施してもらう。この工程が最も難易度が高いと考えており、話が通った時はプランの七割は完了したなと素直に安堵した。
    その他儀式に使ったのは、儀式を受ける相手の命を保障するための触媒のみだ。これについては自力でどうにかする宛てがあり、狙い通り成功している。
    触媒は凝縮した血液を代替にして仕上げた、一種の魔術器具だ。ごく短い時間を持たせるためだけという制限で、どうにか急造することができた。血液はもちろん、自分のものを使っている。
    ナイフと触媒、二つを持ち込んで『儀式』をはじめ、一連の手順は無事終わった。あとの延命措置は、本職の医師たちの腕の見せどころである。
    具体的に何をしたか。シンプルにいえば、少女の体内に取り込まれていた宇宙由来の物質を摘出した。
    黒曜石のナイフで体に切り込みを入れ、原因物質を取り出し、欠けた臓器の代わりにと拵えた触媒を移植して傷口をふさぐ。外科手術じみた工程をとったものの、『儀式』の様式は魔術的アプローチで行ったため、傍目からは超常現象にしか見えなかったことだろう。間近で見学していたのは、担当医数名のみだったが。
    少女の体内に取り込まれていたものは、定着した個所を起点に周囲の有機物を解析し、未だ解明されていない未知のエネルギーに変換して吸収することを目的としていた。体内に張り巡らされた電気回路は、少女を延命させるためにつなげられた医療機器類が稼働するための電力を、直接かつ効率的にエネルギー利用するために生成されたのではないか、と推測される。
    エネルギー置換が進んでも肉体が物理的に欠損しなかった理由まではわからないが、それはこれから研究を進めていくということになっている。伝承科に収容されることとなった、新たなオーパーツを通じて。
    新たなオーパーツ。少女の体から摘出された原因。
    それは見た目には精巧な作りの、かわいらしいモチーフで成形されたキャンディーに似て、中身は敢えて類似するものをあげるとすれば、小型電子機器の記録媒体に使うSDカードに似ていた。
    キャンディーの話をすると、少女の両親は心当たりがあったようで、礼代わりに証言をしてくれた。危ないので注意してやめさせたのだが、以前少女を含む友人グループ内で、噛まずにキャンディーを飲み込む迷信じみたおまじないが流行ったことがあると。

    病院の好意で点滴と輸血などの処置をうけながら、あてがわれた病室のベッドにぼんやりと横たわる。
    上着類は脱いでいて、首元も緩めて、今は実質上半身はシャツ一枚しか身に着けていない。
    心臓の位置に手を置いて、ぽつりと呟く。
    「あんまり怒らないでくれ」
    それは一方的な懇願と様子見の言葉だった。
    デイビットの心臓には、神の繊維が絡みついている。心臓のみという認識だったが、それが体内に寄生してもう随分長い時間が経った。繊維が成長も可能とする菌類であるなら、すでに他の部位にも浸食がすすんでいてもおかしくないのではないか。今回のケースを担当して、ふとそう思った。
    デイビットの命と一蓮托生するかのよう、寄生している神の存在。それはずっと自分という存在を間近で見守り続けてきたのと同時に、決して自分という存在を他に明け渡しはしないと独占もし続けてきた。会話が成立しているようで、殆どが繊維を通じて、神が持つ全ての知識や権能を概念的に読み取り、そこに神の意思を汲み取り、個人的に解釈しているだけに過ぎない。
    それでも、この繊維の存在をおぼろげに知覚しだした頃から、ずっと側に誰かが寄り添っているような感覚だけはあった。それは積極的に助けてくれることもなく、かといって見放すでもなく、ごく当たり前のように側にある。まるで自分の影のように。
    「おまえの真似をしただけだ」
    続けて呟き、目を閉じる。貧血と、集中力を使い過ぎたことによる精神的な疲労。これを緩和するには、ひたすら休息する意外に有効な手段はほとんどない。
    神はかつて現世に顕現した時、依り代とした人間の肉体を文字通り生贄として消費し、神の御業を再現した。少女の体から概念的に消失した臓器の働きを一時的に補うための触媒。それを自分の血で用意したのは、その事実を知って閃いたようなものだった。
    文字通りの触媒として利用するなら、他人の血液でも全くの不可能ではなかった。神が行ったものに比べれば、今回の儀式は極度に簡略化され、魔術師の中では一般化の進んだ魔術でもある。
    それでもやはり、一番手っ取り早いのは自分の体を使い潰すことだ、と判断した。きっとその意識は、あの頃から微塵も変わっていない。
    「昔、本当の『昔』のことだが」
    目を瞑ったまま、仮眠する前にこれだけはと思って言葉を続ける。
    自分にとっての神様に話しかけたいことを話している。それを相手が聞けているのか否か不明だったが、恐らく届いてはいるだろうという、デイビットにしては全く根拠のない確信だけはあった。
    「遺物の光を浴びたあと、伝承科に存在を発見されて、体を隅々まで調べつくされたことがあった。塩基配列まで人間と同じだと判明したのは、それのおかげだ。その時確かちょうど、あの子みたいに管だらけでベッドに寝ていたんだ。日数的には、一日二日程度の間だったけど。その状態をマカロニとかいうんだ。流石にオレも、そのセンスはどうかと思ってる」


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    ant_sub_borw

    DOODLEmhykの各国の魔法使いたちがFate世界のアライメントを持ったらどうなるだろう、という妄想メモを単にまとめたものです(無駄に長い)
    キャラの解釈を深めるためという意味でも考えたものです
    あくまで独断と偏見、未履修のエピソードもある中での選定です
    異論は認めます。
    賢者の魔法使いたちの属性についての考察(妄想)・アライメントとは?
    一言でそのキャラクターの性格、人格、価値観、信念や信条を表す属性と、そのキャラクターが生前どんな偉業を成したか、どんな人生あるいは物語を歩んだかなどを考慮したうえで振り分けられるパラメーターのうちの一つ。
    細かく説明すると非常に長くなるので割愛。
    『善』とつくからいいひと、『悪』とつくから悪人、のような単純な指針ではないことだけは確かです。

    ・アライメントの組み合わせ
    『秩序』『中立』『混沌』/『善』『中庸』『悪』の組み合わせで9パターンあります。
    今回はさらに『天』『地』『人』『星』も加えました。
    おおまかに『天』は神様、それに連なるもの。『地』は各国に根付いた物語に出てくるような英雄。『人』は生前に人でありながらすばらしい才能や功績を認められた人物。『星』は人類が作り上げた歴史の中でその技術や知識といったものに大きな進歩を与えるような功績を持ったもの。
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