「千冬、一緒に逃げよう」
一虎がそう告げたのは、東京卍會の元メンバーの訃報が届いていた中、ついに右腕だったはずのドラケンこと龍宮寺の死が報じられた夜だった。
「逃げるって」
「このままだと間違いなくマイキーの次の標的は俺たちだ」
「だからって何で」
一虎は千冬に疑いの眼差しを向けられる。一虎からの突然の申し出であるため無理もない。
「東卍の…マイキーの目の届がない範囲、田舎だって海外だってどこだっていい、だから」
「……逃げてどうするんですか」
「時間作って、マイキーの目を覚ませたい。きっと何か方法はあるはずだろ」
一虎の話は半分本当だが、半分は嘘だ。
万次郎の目を覚ますためにも、生き延びなければならない気持ちはもちろんあったが、何より千冬に死んで欲しくないと願ってしまった。
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