受け持った授業が終わり、オーエンは鼻歌でも歌いそうなぐらいに、気分が良かった。正直、教科書に書いてあるようなことはほとんどわからないが、オーエンが潜入調査として受け持った授業内容は、オーエンにぴったりのものであった。
どちらかというと闇の魔法のような分類とされる魔法を、生徒に見せればよいのだ。あくまで、見せてやる程度に微弱な悪い魔法を生徒にかけて、甚振ったあとに、それを解放する。そうして、これに対抗するような魔法を生徒たちに考えさせるのだ。他者が苦しんでいる様子が好きなオーエンにとっては、まさに天職のような仕事であった。
「オーエン先生、ちょっと良いですか」
「なあに、ミスラ先生」
声を掛けられて、振り向けばミスラの顔が近くにあった。今だけはお互いにここの「先生」であった。呼び慣れない先生、という言葉に少々違和感を抱くが、笑顔を貼り付けてにこにこと顔を見ればミスラの機嫌も悪くないということがわかった。
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