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    mhyk_tow

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    カードだけ見て書いてた先生×先生がボツになったので供養。はじまらない。

    この女の子がミスオエみちゃうとこ書きたかったようです。

     受け持った授業が終わり、オーエンは鼻歌でも歌いそうなぐらいに、気分が良かった。正直、教科書に書いてあるようなことはほとんどわからないが、オーエンが潜入調査として受け持った授業内容は、オーエンにぴったりのものであった。
     どちらかというと闇の魔法のような分類とされる魔法を、生徒に見せればよいのだ。あくまで、見せてやる程度に微弱な悪い魔法を生徒にかけて、甚振ったあとに、それを解放する。そうして、これに対抗するような魔法を生徒たちに考えさせるのだ。他者が苦しんでいる様子が好きなオーエンにとっては、まさに天職のような仕事であった。
    「オーエン先生、ちょっと良いですか」
    「なあに、ミスラ先生」
     声を掛けられて、振り向けばミスラの顔が近くにあった。今だけはお互いにここの「先生」であった。呼び慣れない先生、という言葉に少々違和感を抱くが、笑顔を貼り付けてにこにこと顔を見ればミスラの機嫌も悪くないということがわかった。
    「ちょっと来てください」
     有無を言わさず、首根っこを掴まれ、オーエンはミスラに近くの空き教室に連れ込まれた。誰もいない教室は、ドアを閉めてしまえば遠くの生徒たちの笑い声なんて雑音になってしまい、静かな空気が流れていた。
    「あなた、もう授業終わったんですか? すごい、歓声みたいなのが聞こえてきましたけど」
    「ああ、ミスラは授業まだなんだっけ。……あいつら、すごい単純だ。ちょっと強い魔法を見せてやれば、簡単に下僕のようになる。僕のことを尊敬の眼差しで見てくるんだ。とっても、可哀想で、可愛い」
    「なるほど」
     ミスラは指で顎を触ると納得したように、口をぽかんと開けた。
    「上級魔法を見せてやって、格の違いを見せつければいいってわけですね」
    「……ふふ。そういうこと。あいつら、単純だから、すぐに騙されるよ」
    「いいことを聞きました。ありがとうございます」
     お礼を言うと、ミスラはそそくさと廊下へと消えてしまった。オーエンはミスラにお礼を言われたことで、さらに気分が良くなっていた。自分よりも強い奴が、自分へと感心して、礼などまで言うなんてことはめったにありえないことだ。気分のよいまま、ミスラのあとに続いて、廊下へと出ると、何人かの生徒たちから視線が集まるのがわかった。目があった生徒には、にこり、と適当に愛想笑いを返す。しかし、顔を赤らめた少女は、急いだようにお辞儀を返され、ぱたぱたと足音を立てて、過ぎ去ってしまうのではないか。
     それを見て、さらにオーエンの気分は良いほうへと加速した。先生に憧れる生徒、というものもいるのかと思うと、それだけで自然と笑顔になってしまう。すれ違う生徒に、挨拶やお辞儀をされながら、「先生」になりきったオーエンは、この潜入捜査の間だけでも、上手く立ち回って強い魔法使いたちを少しでも作り上げてやろうと思った。もちろん、善意なんかではなく、将来、自分の力になるマナ石としての食料のためだ。
    「オーエン先生」
     振り向けば、先ほどの授業で質問してきた生徒がいた。シノのような漆黒の黒髪に、真っ赤な瞳。魔力はそこそこに強かった記憶があった。意地悪で放った魔法を、咄嗟の機転で上手く交わしていた女子生徒だ。どれだけ頭がよくても、応用ができて、臨機応変に対応できなければ、北の大地ではすぐ死ぬ。そういった応用力があった、生徒であったので、珍しく顔を覚えていた。にこりと、微笑んで、眼鏡を片手で押し上げた。
    「ああ、さっきの――」
    「――ティナ、といいます。オーエン先生」
     制服のスカートの裾を掴んで小さくお辞儀をする彼女は礼儀正しく、美しい動作であった。顔を上げると、オーエンのほうをじっと見上げ、笑顔をみせてくれていた。
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