Recent Search
    Create an account to bookmark works.
    Sign Up, Sign In

    えり〜

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 19

    えり〜

    ☆quiet follow

    これは…SS…なのか?
    馴れ初めたばかりなプレイヤーくんとルーンくんの平和な話(のつもり)

    🍰「ただい…ッ!?…ゴホッ!ゴホッ!」

     仕事の疲れでもたれる様にドアを開けた俺をお出迎えしたものは、玄関まで立ち込めた謎の煙と何かヤバいものが焼けた様な劇臭だった。

    「お帰り!そろそろ帰ってくると思っていたよ!」

     リビングの方から声を弾ませて返してきたのは、ここ最近俺の家に居候中の少年。名前は「ルーン」と言うらしい。ゲームセンターの帰りに突然「ずっとキミを見ていたんだ!」と咄嗟には信じ難い声がけをされて以来、まるでずっと前からここに居たみたいに家にいる。
     (待て待て!『それじゃまるでお前は誘拐犯じゃないか』みたいな顔するなって!俺だって何度か警察に連絡しようとしたんだ。だけど俺が通報しようとするタイミングにアイツがどこからともなく現れて携帯をひょいと奪われちまうし、直接警察に向かおうとした時は、何故かいつも抗いようのない眠気に襲われるんだ。まるで何者かにエネルギーを吸われているみたいに…って、本当だってば!
     それに、ルーンには…恐らく親も、戸籍も、家もなさそうだし…)
     …とまあ、こんな馴れ初めはさておいて。俺は彼の嬉しそうな声と家の惨憺たる状況のギャップにクラクラしながらルーンのいる方へ向かった。
     
    「…なあ。これは一体どういう…」

    「ああ、やっと来た!まあまあ、これを見てくれよ!」

     そう言ってルーンがキッチンの方から持ってきたものは、黒いドーム状の…謎の匂いを放つ…多分食べ物?だった。ああ……これか。家じゅうに広がる煙の原因は。

     「おい、これ、まさか、君が作ったのか…?」
     
     「ふふ、そうさ。驚いていると言う事は、”さぷらいず”とかいうやつはどうやら成功したようだな…」

     …ん?サプライズ?

     「…どうした。そんな顔して。今日はキミの誕生日だろう。キミたちは誕生日に”けーき”とやらを口にする風習があるんだろ?これはぼくが作った”ばーすでーけーき”だ。たんと食べるといい。」

     ハッとした。そういえば今日は俺の誕生日だったじゃないか。誕生日を特別な日にする事をやめて数年経ち、仕事でも友達にも声をかけてもらうことのなかった俺にとって、こんな風にお祝いされる事は新鮮だった。それに、…俺のためにケーキを作ってくれたなんて。不器用ながらに頑張ってくれたのだろうか…。そんな彼の姿を見たら、仕事の疲れも家の惨状もどうでもよくなってきて。

    「…な、なんだよ、嬉しいじゃん…ありがとう…」

     気づいたらそう言っていた。ルーンは俺の顔を不思議な紋様の浮かぶ瞳でじっと見つめると、嬉しそうに目を細めて「どういたしまして」と返す。……そういえば、ルーンの見目や振る舞いの端々に、俺は時々浮世離れというか、人間離れというか、とにかくそういう類のものを感じることがある。彼は肝心な時に神出鬼没なところがある。それにこんな瞳の模様、彼以外に見たことがない。さっきの言葉から察するに、彼はバースデーケーキの風習を知識でしか知らない様である。一体彼は何者なんだろうか……。
     まあ何はともあれ、ルーンがこうしてケーキを作ってくれた事に俺は俺自身が思っている以上に嬉しい気持ちで満たされている様である。出会って1週間ちょっとばかしなのにこんな手厚く………手厚く………ん?あれ?

     「俺って、君に誕生日の事言ったっけ?カレンダーにも特に書いてないし…………」

     「……ふふ。何度も言っているだろ。『ずっと前からキミを見ていた』んだ。これくらい、把握していて当然だろう?」

     「…!!まさか、君は、本当に─────」

     ───ピピ、ピピピ!!と俺たちの話を遮る様にけたたましく音が鳴る。思わず情けない叫び声をあげてしまった。ふとキッチンの方を見やると、…これ、明らかに出てはいけない色の煙が漏れ出てないか!?まずい、早くなんとかしないと家ごとお釈迦になりかねないぞ!?当のルーンは口に指を当てて興味深げにその様子を眺めるばかり。…全く、とんでもない少年だ。色々な意味で。

     「まずい!ルーンくん!まずはキッチンの後処理を何とかしよう!俺も手伝うから!!それから……」

     それから、2人でケーキを分けて食べながら話でもしよう。君が俺を知ってくれているみたいなのに、俺はまだ君について知らないことだらけのようだしな。ルーンは俺の焦る顔を不思議そうに見ながら頷いて、ふと何かに気づいた様に目を見開いた。

     「…しまった!言い忘れていた!」

     『──お誕生日おめでとう!◯◯くん!』
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    💗
    Let's send reactions!
    Replies from the creator