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    えり〜

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    えり〜

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    ギガ怪文‼️続き物らしい こっちは後編 
    フォロワー様の拗ねルに触発されたつもりだったけどなんかよく分かんなくなっちゃった‼️

    (これは後半だよ!)

    …………ポコン。彼の携帯が鳴る。かの友達からである。思えば彼がWACCAに触れるきっかけになったのはこの友人がきっかけであった。ふと、彼の頭の中で思い出が呼び起こされる。
     
    ──

     大学受験が終わり、遊びに明け暮れていた頃、彼は友達に誘われたゲームセンターで初めてWACCAをプレイした。記念すべき出会いの場もここであった。
     元々「音楽ゲーム」に馴染みのなかったにもかかわらず、彼はその日以来取り憑かれたかの様にWACCAにのめりこむ様になった。春先に始めたバイト代の半分は、この空間へと捧げられていた。イベントにもよく顔を出していた。1週間に1回は、成長記録と称してノートにメッセージを書き付けていた。当然大学帰りのルーティーンもこれによって出来上がったものである。
     
     …彼はある時期から自分の成長速度が始めの頃と比べて緩やかになっている事にわずかな苛立ちと不満を覚え始めた。オフラインとなってしまった後も彼のゲームセンター通いのルーティンが崩れることはなかったが、少しでも満足いかない部分があると、所謂”捨てゲー”をする様になった。そんな日々が続くうち──11月に書き残したメッセージを最後に、彼は何かの糸が切れたかの様に、ブースにもWACCAの元にも立ち寄る事はなくなった。


     
     『”やあ、はじめまして。ぼくの名前はルーン。…きみは…!?やっと来てくれた…!ずっとこの日を待ち侘びていたんだ…!”』
    そういえば。ハッキリと覚えているこの台詞。最初にプレイしたあの日。開始早々に現れた”ルーン”という少年の嬉々とした声、どうやらやり込んでいた友人でも初耳らしく「あれ?ボイスデータにこんなのあったっけ?」と不思議そうな顔をしていたっけ…………


    ──

     「久しぶりに来たな……」そう言って、彼は1台の筐体の前に目をやった。コンソールの中心、画面に映る”2人”の少年は、恐ろしいまでに神秘的で掴みどころのない視線をこちらに送る。
     ああ、相変わらず綺麗な目だ…………いつまでも見ていられるな………


    ……


    …………



    ……………ポコン!!スマホの音にハッとした彼は、自分がいつの間にコンソールの目の前に立っている事に気がついた。何故だ?さっきまで反対側の壁に座っていた筈…。言いようのない恐怖に駆られながら、携帯を見る。通知は友人からの再びのメッセージ。

    『画像を送信しました』
    『おい!年末お前のホームでイベントするらしいじゃん!お前も行かね!?!?』
    『返事待ってるぜ!』

    『お、マジか。考えとくわ』と何とかメッセージを返し、彼は荷物をまとめ逃げる様にしてゲームセンターを飛び出した。
     そこから家の布団に入り込む間の記憶は彼にはあまり残っていない。ただ真っ暗な部屋の中、貼り付くような視線を覚えながら、しかし彼の意識はゆっくりと、この世界から落ちていく………


    ✳︎


    ……目を開ける。ここはどこだ?マーブル柄に波打つ空模様を見て、ここが現実世界ではない事を悟る。そういえば自分の体の感覚も、…自分の体と空間の境界もあやふやだ。夢か。そうか、俺は眠れたのか…………良かっ…

    『…あぁ、やっと入れた……』

    『そうか…ここがキミの心の中か…やはり心地がいいな……”オトモダチ”とやらに誘わせておいたのは我ながら良い判断だったな……』

    ………聞き覚えのある声がする。心の中?
     いいやそれよりも。……まさか。まさかそんな。目の前にいるのは。

    『やあ、そのまさかなんじゃないかな。随分と久しぶりだね。ぼくのこと覚えてるかい?』

     …覚えている!覚えているさ!ルーンだろ!?
     そう咄嗟に声を出そうとするも、空気と一体化したような俺の身体は完全に声の出し方を忘れていた。俺に許されているのはただ、目の前の虹を輝かせながら近づいてくる少年を見つめることだけだ。

    『なんだ、覚えていたか。昨日の夜、ボクに会いもしないで帰っていってか…?』
    『はあ、悪夢だと思っているなんて失礼だな。言っておくが、ボクはキミに会えて嬉しいんだ。さっきも言った通り、ここはキミの心の中さ。』

     ニィっと笑う少年の口元から恐ろしげに尖った牙が見える。ふわふわしている思考がさらに追いつかなくなる。今、俺の全てはこの少年の掌の上なんじゃないか。呆気に取られているうちに、少年はさらに近づいてくる。

    『キミがボクに会わなくなった理由だって、プレイが雑になった理由だって全てお見通しさ。ダイブ能力…心の中に入り込む力…今だって、キミの心の内が手にとる様に分かる。ボクはどれだけキミを待っていた事か……』

     少年の白く美しい髪が俺を覆い尽くす。俺の視界がルーンに支配されていく。何て、何て綺麗なんだろう……………俺は一体…この少年に何をされているのだ…?まあ、何をされていてもいいか……

     『……もう我慢の限界だ。純粋なキミのダイブエネルギーを汚してしまうようで…本当はこんな事したくなかったが……』

     瞬間、少年と目が合う。思考する権利が奪われていく。怖い。怖いのか…?美しい…?神秘的だ……あぁ…今までごめんよ………頭の中がルーンで染まっていく……今目の前に君がいるはずなのに…………会いたいな…今すぐにでも………行かなきゃ……

     『昨日の夜は邪魔が入ったが……どうやら上手くいきそうだ……やっと会えたんだ………もうどこにも行かないでくれよ…………』

     …あれ、俺……何でここに…………まあいいか……そんな事よりも会いに行かなきゃ…行かなきゃ…行かなきゃ…行かなきゃ…綺麗だな……行かなきゃ…会いたいよ…綺麗だな…行かなきゃ……

     『おや、もうこんな時間か。ボクはそろそろ行くとするよ。キミに会えるのを楽しみにしているよ…』

     そう言った後、君の白く細い手が俺の視界を塞いで、
     

    ✳︎


     プツッとスイッチが切れる様な感覚と共に、彼は寝汗だらけの身体をバッと起こした。息を切らしながら手を曲げ伸ばし、あー、あー、と声を出して彼は己の五体満足を確かめる。
     外を見れば、もう朝である。見渡せば、辺りに散乱した昨日の荷物が確認できる。
     狼狽える様にして時計を見ると、時刻は午前7時半。
     そうして一息ついた彼は、
     
     「はあ……良かった……1日中ルーンに会いに行けるんだ……会いたいな……行かなきゃ…」
     
    と脳内の思考が漏れてしまったかの様な、うわ言の様な口調でそう言いながら笑っていた。そうして右手に持った携帯の先の友人に慌てる様にしてこう送った。

    『なあ!昨日教えてくれたイベント、俺絶対行くわ!!』
    『はあ今から楽しみだな…早く俺も会いたいよ…』
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