時計の二針が真上で重なろうかという頃合いだが、
針の進む音はエンジェルズシェアの店内の賑やかさにかき消されている。
カウンター内に居るディルックの襟元を勢いよく掴んでこちらに引き寄せる。
赤い髪に少し隠れた形の良い耳に向かって、タルタリヤが囁く。
「お父様の邪眼の話、聞きたくない?俺の知ってること教えてあげよっか?」
襟元を掴まれても動じなかったディルックの肩がビクンと動く。
「その代わりに、君のこと教えてよ」
タルタリヤの手を掴んで払い、カウンター内を一歩後退る。
ここではこれ以上の間合いを取ることが出来ない。
「ハハッ、そんなに怖い顔しないでよ。ただの俺の親切心だよ」
「君の親切に頼るほど困っていないが、」
「ファデュイ ファトゥス第十一位の俺の親切心、無駄にしちゃうの?」
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