『引退報道』超満員の東京ドーム。無数のペンライトが揺れている。何度見ても胸に来る景色だ。そのひとつひとつは僕のファンの手に握られていて、もう一方の手は僕へ向かって目一杯伸ばされていた。
「みんな、本当にありがとう!!」
「あむぴーー!!」
「大好きだよぉぉーー」
「もう会えないなんでやだぁ……!!」
ファンと同じように手を伸ばし、手を振り続けたこのステージを、僕は今夜をもって引退する。
「僕、安室透は、明日から普通の男になります……!」
アイドルを引退することを決断したとき、僕は同時にアメリカへの移住も決めていた。
トップアイドルだった僕は日本では顔を知られ過ぎていてとてもじゃないが一般人として生きていくのは難しい。
僕がアイドルを辞めるという噂が広まると「一緒に仕事をしよう」と声を掛けてくれたひとはたくさんいた。
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