ーー暇潰しに付けたテレビを見て初めて気が付いた。そうか、今日は七夕か。
願いを文章化して飾る事によってその願いをより具現化しやすくなる…というワケか、上手く出来たモンだ。
僕には願いなんてこれっぽっちもない。
僕には金がある、金があればなんだって叶う、短冊よりも札の方が割に合う。
「俺の前で金持ちアピールとか嫌がらせか?これだから最近の若者サンはよ、二十歳とか信じられねえな」
闇商人のヴェルゼイがいやみったらしく呟いた。
「鯖読み元王子くん、君だって実際は17じゃないか、もっと子供らしく出来ないの?」
「トナリーノで生きる為にはなんだってするさ、この名前だって、サイショー城兵士の肩書きも全て裏で手に入れたんだ。子供らしさなんて忘れちまったさ」
何故か誇らしげにヴェルゼイは語った。
そんな彼には青年のような未熟さはなく、裏で鍛え抜かれた強かさがあった。
「そんなに金を持て余すなら少しぐらい買ってくださいよぉ〜」
完璧な営業スマイルだがヴェルゼイの本性を知るボニーからしたら気色悪いものでしかなかったので、顔を思いっきりしかめてやった。
「法にギリギリ触れてそうなヤツしかなさそうだけど商品ぐらい一応聞いてあげるよ」
「んー、モルヒネとかは金づr……常連がよく買ってくれるんだけど」
「ヤク中の顧客とはおったまげたな」
ヴェルゼイが客の事を金づると呼ぶ事に対してはもう突っ込まないことにしている。
「一部地域では法律で禁止されてるけどね、トナリーノでは許されるしバレなきゃ犯罪じゃないのさ」
こちらを見つめながらドヤ顔で……って普通にウザいなこの顔。