下民と7日間機械に改造した下半身のメンテナンスを終え、そろそろエネルギー補給…つまり夕食の時間になる頃であった。
冒険に出た4人が帰ってきた様だ。
4人全員がボロボロの状態であり、切り傷や打撲といった怪我が目立っていた。
本官が4人のうちの1人ならここまではならない、ボロくさくて下民のお前らには丁度いいものではないか。
帰ってきたばかりの4人を鼻で笑っているとその後ろからもう1人分の影が見えた。
ここの宿屋は神の力（？）によって怪物は侵入出来ないらしく、恐らくリーダー（本官は認めていないが他の下民よりマシな）ボニーの仲間であろう。これ以上汚らしい下民を増やすな。

救出した1人を含めた4人は体の回復の為に先に寝床に就いた様で皆で集まり食事をする場所である食堂はしんと静まっていた。

自らをエリートなどと称する自惚れた悪魔のラムセと世間話をしながら自分も寝床に就いた。
瞼を閉じながらふと例の1人を考える。
確かに大魔王とやらに不意を突かれ監禁された時に（監禁罪、よって有罪）ボニーの仲間である自分を抜いた8人とは会ってはいるが本官は寄せ集めの下民共には全く興味が無かった、エルフの国で共に（仕方なく）戦ったラムセとメイスの2人以外に顔も名前も覚えてはいない。
というより例の1人はメンバーの一人一人に挨拶を回らないのか、他の奴はどうでもいいが本官は上級民族の者だ、同じ場に立ち共に戦える事に感謝を表さないとはとんだ無礼者だ。

怒りを募らせていたがいつの間にか寝ていたようだ。
窓からチュンチュンと鳥の鳴き声がする、朝から騒がしい。
部屋を出て、食堂に向かうと長テーブルのど真ん中を陣取り食品を必死に貪る者がいた。
コイツが例の1人か……
食事のマナーも知らないのか食い散らかしたカスがそこら中に広がっていた。
身だしなみという言葉どころか概念を知らない無造作で乾燥した海藻のようなヘアスタイル。
りょうりにんのディアムが食い散らかしている彼にご立腹なようで文面にする価値もない汚らしい言葉を連呼していた。
スラム街出身のディアムに同情などしたくは無いが食材を食い散らかすという行為は好ましくない。場合によっては刑務所行きになるであろう。

「おい、なんだこの豚小屋は」

「あっ、ノエルさん！コイツいくら料理作ってもすぐに食っちまうんですよ！
散らかってるのは気にしないでください、バーナードです」

話を聞く限り食堂が豚小屋のように荒れ果てているのとこの海藻下民は関係ないらしいが、結局は海藻下民が食事を終えないとバーナード（そんな者いたのか知らんが食べ物を無駄にしたので後で処罰する）が散らかした物を掃除することも出来ないので……

本官を無視して食事にありつくとは、下民の中でも更に落ちぶれた人間らしいな。
きっとまともな教育さえ受けれていないのだろう。
貴様のような底辺の人間には二度と拝めぬであろう本官の顔をじっくりと焼き付けるがいい。

「おい、海藻下民」

海藻下民は大きな肉をかぶりついており、こちらには全く耳を貸さない。生意気だ。

「おい、聞いているのか」

耳どころか顔もこちらに向けない。

「おい！海藻！」

海藻下民の口から大きな肉を無理やり引き抜き、頭を掴んで自分の方向に向かせた。
何故本官が御自ら下民の顔を見なければならないのだ、この数秒だけで手が穢れてしまったではないか。

「なんだおまえ メシの時間邪魔しやがってよ」

薄汚い緑の目と自分の目が合った。
この顔、見たことがある。嫌でも毎日見た憎たらしい顔だ。
極悪指名手配犯、ニネット・ミレーヌ・ミッサ
十数年前に両親を殺害した後死体遺棄、その後行方をくらまし、飢え死でもしたと思っていたが…