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    overcome_dream

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    overcome_dream

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    去年サイト開いて書いたけど公開してないもの。供養。nmmn。でもお相手の名前出てないからパスとかは要らんやろと思ってる。nmmn扱ってる人教えて。
    ユーリ夢の歌姫の表現ここから来とるんやな…

    路上の歌姫「んぁ?」

    仕事の帰りだった。電車に揺られ家の最寄り駅で降り、改札口を通ってから直ぐに聞こえてきた音。回りは帰宅ラッシュの時間帯でザワついている・・・にも関わらず何故かその音だけはしっかりと耳に入ってきた。

    「・・・歌?」

    それはよく聞こえるけれど五月蝿くなく、疲れた体に染み渡るような心地いい歌だった。

    (何処から聞こえるんや?)

    辺りを見回すと、もう閉まった店の前にギターで弾き語りをする女性の姿。彼女がリズムを緩やかに取れば、それに合わせてゆらゆらと左右に揺れる腰まで伸びた艶のある黒髪。時に激しく、時に緩やかに、夜に合うような声で、明日を待つような優しい表情で。夜を照らす街灯の光は、ステージライトのように彼女を照らす。何の変哲もない、見慣れたはずの駅前が大きなステージに変わっていた。引き込まれる。ユラユラと揺れる髪の毛に誘われて少し近づけばフワフワとした気分になっていく。

    (夢中になるってこんな気分なんかなぁ)

    一気に辺りが静かになる。彼女の声しか聞こえない。今この瞬間・・・世界は彼女のものだった。





    ユラユラ、キラキラ。

    キラキラ、ユラユラ。






    パチパチパチパチ!

    「っ!?」

    目の前が弾けるような大きな音にビクリと肩が揺れる。

    「・・・え?」

    気付いたら辺りはいつもの駅前だった。彼女の歌は終わっていて、周りを取り囲んでいた沢山の老若男女が一斉に賞賛の声と拍手を送っている。

    (俺、聴き惚れとったんや・・・)

    俺の後ろにも何人かが立ち止まっていたようで周りと同じように拍手を送っていた。後ろに人がいることに全く気付かなかった。再び周りがザワザワとし始め、チラホラと路上ライブから背を向け帰路につく人の姿も見える。彼女はそんな人達に頭を下げていた。

    「え・・・終わり?」

    もっと聴きたい。そんな気持ちの俺を置き去りに、周りの人たちは終わった!とでも言うように、彼女の足元に開いて置いてあったギターケースの中へ次々と紙幣や小銭を入れていく。

    (え?え?!ま、まって!もうちょっと、終わらんといて!後、俺も入れたい!)

    彼女の歌はタダで聞いてはいけない、そう思わせる何かがあった。ポケットから財布を出そうとするがこういう時に限って変に引っ掛ってすぐ出てこない。

    「ありがとうございます!!」

    「え?」

    財布を取り出そうと四苦八苦していた中、直ぐ近くで聞こえた爽やかな声に驚いて顔を上げる。さっきまで遠かった彼女がいつの間にか目の前に居た。

    「私アンと申します!よかったらチラシだけでももらって下さい!」

    差し出されたチラシと同時に優しく香る柑橘系の匂い。それに似合う爽やかな笑顔付き。

    「あ、はい・・・ありがとうございます」

    気付けば受け取っていた。完全に俺の手にチラシが渡って彼女が嬉しそうに笑う。

    (あ、あかん・・・なんか恥ずかしいぞ!?)

    素晴らしい歌声を持つ人、しかも女性が、素敵な笑顔で自分にチラシを渡してくれている・・・先程までの夢心地が急にリアルなものへ。心臓がジェットコースターへ乗った時の様にドキドキしだした。歌っている時と違う声や表情に気付き心臓が更に早く、大きく動くばかり。

    (イータタタタタタタッ!!し、心臓がぁっ!!)

    それでも何か伝えたいと思って口を開いて出た言葉は思ったより大きな声になってしまった。

    「あのっ感動しました、ありがとうございます!」

    女性に慣れず童貞を拗らせ過ぎた俺はこれ以上の言葉が出てこない。他に気の利くことを言える訳もなく、やっとこさポケットから取り出した財布から諭吉さんを掴んで急いで彼女に差し出す。

    「え!?いやいや、こんなに受け取れませんよ!」

    手を振って受け取ろうとしてくれない彼女にどうにか受け取って貰いたくて勢いよく手に押し付けた、拍子にちょっと触ってしまった。

    (手ちっちゃ!柔らか!)

    と、ビックリして思わず諭吉さんから手を放す。
    重力に従ってヒラヒラと地面に落ちそうになった諭吉さんを彼女は反射的に空中で掴むと困惑の表情でこちらに差し出してくる。返そうとしているのは分かるが俺は絶対受け取らない。困らせたい訳ではないが、彼女にはこれ以上の価値があると思っているしもっと堂々と受け取ってもらいたい。後これ以上近くに居ると心臓口から出そう・・・もう離れよう!

    「ほいたら!」

    直ぐに背を向けて早足で帰路につく。後ろから彼女の声が聞こえたが、他のお客さんから呼び止められたようで追いかけてこれなくなっていた。お客さんナイスー!と思いながら、彼女・・・アンさんから頂いたチラシを大事に持って家に帰り着いた。

    因に貰ったチラシはラミネートして部屋の壁に飾ってある。
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