芸能パロ石乙 薄暗い廃ビルの中、抉れて鉄骨が露出した壁に配管が壊れたのか水の滴る床──という、現場のセット。
目の前には頭と肩から血を流し、荒い息をしているスーツの青年──という、演技をしている乙骨。
その彼に向かって、自分は深刻な表情で、決められた台詞を口にする。
『てめぇ……どうして俺のことなんか庇った?』
乙骨に屈み込んで様子を伺えば、乙骨はハッと笑って台詞を返してきた。
『…っ、当然、でしょう…?あんただって、俺にとっては、護るべき……市民なんだ、から……』
『……バカヤロウ』
その言葉を受けて、石流がクシャリと表情を歪めてそう返す。それから少し見つめ合ったところで、監督から「カット!」の声が掛かった。
石流が張っていた気を緩めれば、乙骨も少し無理な体勢だったので、よっと身体を起こした。監督やスタッフの方を見れば、モニターで先程撮影した映像を確認しているようで、少ししてから「よし、OK!」と声が掛かった。
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