石乙散文 何度目か分からない、呪力の高出力指向放出の撃ち合いで、乙骨は相手の呪力出力を上回ることが出来ずに吹っ飛ばされた。
「う、ぐ…!」
「ほらほら、まだまだ足んねぇぞ」
地面に這いつくばる乙骨に、相手はそう言って近づいてくる。乙骨はなんとか身体を起こし、顔をあげて相手を見た。
特徴的なリーゼントとポンパドールの髪型をしたその男は、乙骨が所属する呪術高専の非常勤教師である石流──呪術師の等級と単純な呪力量については乙骨の方が上回るが、呪力出力については右に出るものはいない。
そんな石流は、任務続きで高専の授業に出れない乙骨へ補講と称して野外での訓練をつけてくれていたのだが、乙骨が唯一敵わない呪力出力で撃ち合うだけなんてあまりに一方的ではないかと思っていた。
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