青の飴玉半透明で艶のある丸い頭はまるで飴玉のようだと、クダリは前々から思っていた。昔ノボリからもらった、ソーダ味の飴。後ろからそっと触れると、手袋をしていてもほのかに温かい。
「シャンッ」
「わ」
急にシャンデラが振り返り、クダリは反射的に手を引っ込めた。危うく白いコートに焦げ目がついてしまうところだった。
「女性の頭に勝手に触れるのはタブーですよ」とソファから声がかかる。
クダリはその隣にわざと勢いよく腰掛け、ノボリの肩に寄りかかった。化石ポケモン特集のページを開こうとして、ノボリに手を叩かれる。
「頭じゃなくて、勝手に触るのがダメの間違い」
クダリは手袋を外してテーブルに放り投げた。
「分かっているなら自重なさい」
もう一度雑誌に伸ばされた手を払おうとして、逆にノボリの手はクダリに捕らえられた。切り揃えられた爪に青い炎の光が反射する。
「後で貸すと言ったでしょう」
「分かってるでしょ、諦めて」
ノボリはため息をついて、部屋を揺蕩っていたシャンデラに空いた手のひらを差し出した。その手にとまったシャンデラの腕木を取り、おやすみのキスをする。シャンデラはため息をつくように体を上下に揺らして、炎がかからないように気をつけながらノボリの頬に丸い頭を擦り付けた。
「飴玉みたいで可愛いなあ」
寝室へ引っ込んだシャンデラの後ろ姿を見送って、クダリは言った。
「口寂しくなっても食べないでくださいね」
「ぼくのはこっちにあるから」
雑誌を閉じたノボリの顔を覗き込み、クダリは笑って口づけた。ノボリの味がした。
ソファの背もたれに引っ掛けられたコートと投げっぱなしの手袋を指差して、ノボリは言った。
「片付けができるまで、ご褒美はお預けですよ」
「はあい」
end