泣き顔が忘れられない話。またバーを越えられなかった。
軽々と飛び越えていたはずの目標がいつもより高く感じて、今までどうやって跳んでいたのだろう、と冷や汗が滲む。
「……あ〜、やめやめ。」
滲む焦りを隠さないままその場を離れ、裏庭のベンチに座る。
爽やかな風が吹き通るこの場所であれば、少し気分を変えられるだろうと思っていたのに。
梅雨のじっとりとした空気が肌にまとわりついて、余計に気分を鬱々とさせる。
背もたれに寄りかかりながら、もやもやする気持ちを吐き出すように声を出した時。
体育館のある方角から「おつかれ〜」という声が聞こえて目を向けると、にやにやと笑みを浮かべた長身の男がそこに居た。
「おやおやお嬢さん、サボりですかぁ〜?」
「クロオ………はぁ……」
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