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    plenluno

    @fullmoon0908

    主に元相棒の畑を耕す字書き👨‍🌾
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    plenluno

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    間に合ってない書き納めです!あけましておめでとうございメリークリスマス(混乱)

    ブラッドリーがまだ子どものネロにクリスマスプレゼントを送る話
    祝福と胡椒。

    Blessing for you ある吹雪の夜。
     貴族の屋敷を改装したアジトの広間の中心で、場の誰よりもよく呑みよく食べた男―死の盗賊団頭領・ブラッドリーはふと動きを止めて呟いた。
     「そろそろ寝たか」
     「っすね」
     傍らで呑んでいた幹部の1人が短く応えるとブラッドリーは緩慢な動きで立ち上がり、若干潜めた声で団員に号令を発した。
     「よし、乗り込むぞてめえら。トチるんじゃねえぞ」
     「イエス、ボス!!」
     「馬鹿、声がでけえ!」
     思わず大きめの声を上げたのは本日のターゲットであるネロの直属の上司。酒が入った状態で適当に張った防音結界があるとはいえ、大きな声を出せば起きるかもしれない。ブラッドリーの掌が諫めるように彼のスキンヘッドの頭を叩くぺしーんという軽い音が作戦の開始を告げた。


     「《アドノポテンスム》」
     指示に沿って動き出した子分たちを横目に、ブラッドリーは小さく呪文を唱えた。指輪だらけの手にリボンのかかった小箱が収まると同時、どこからともなく飛来した羊皮紙と万年筆が躍る。ぱちん、と鳴らす指の音とともにペン先が紙面をさらさらと滑り、短く文字を綴ると、羊皮紙がひとりでに折りたたまれてブラッドリーの人差し指と中指の間に収まった。
     「………」
     ブラッドリーは紙片と小箱を交互に見つめ、ふっと柔らかく笑んだかと思うともう一度呪文を唱えた。身体から立ちのぼった光の粒は風花のように舞い、手の中の贈り物へひらひらと降りてくる。贈り物が触れ合った瞬間、光の粒は弾けて一層輝きを増した。
     古参の子分たちであっても数えるほどしか目にしたことがない、ブラッドリーの祝福。酔っ払ってその辺に転がっている者を叩き起こそうとしている者もそこら中から汚れた皿をかき集めて厨房へ運ぼうとしている者も、その美しい光景に息を呑み感嘆の声を漏らした。
     祝福によってふわりと温かい光をまとったそれらにブラッドリーは表情を動かさないまま目だけをすっと細める。
     普段からぼぅっとしている癖して周りの人間への気遣いは怠らない、新入りの小せえやつ。ネロ、というその名を認識し、ブラッドリー自身もネロをその名で呼ばうようになった頃には、ネロは厨房に立ち盗賊団全体の栄養管理を担うようになっていた。食がもたらす団へのプラスの影響でもって、医食同源という言葉をブラッドリーに叩き込んだ男。
     こういうことがあるから行き場を失った奴や野垂れ死にそうな奴を気まぐれに拾ってやるのはやめられない。
     ブラッドリーは長い外套を翻して灰青髪の少年が眠る部屋へ歩きだした。




     ネロはブラッドリーの昔話を聞きながら、そんなことあったっけ、とぼんやり思う。
     いや、あった。起きたら枕元に何かぴかぴかした小箱と手紙が置いてあった朝。
     ――あの後、確か。
     当時のことをはっきりと思い出したネロは、この時点でもう逃げ出したい気持ちになった。顔に熱が集まっていくのは酒のせいだと思いたい。
     「あいつ、あの後わざわざプレゼントの礼言いに来たんだぜ? 手紙の筆跡でピンときたらしい。俺様の字なんざ見せたの、商談で初めて酌させたときの1回きりだったんだがなぁ…。本当よく見てるよな。まさかバレるとは思ってなかったから、あん時は肝が冷えた」
     「へえ…! 1回で筆跡を覚えるなんてすごいですね!」
     ブラッドリーはそんなネロの様子も特に気にかけぬまま、懐かしむように目を細める。賢者が驚きの声を上げ、目をきらきらと輝かせた。
     ブラッドリーが言ったことはまあ確かにそうだ。あの特徴的な彼らしい字は一目見ただけでネロの目に焼き付いた。魔力感知も満足にできなかった頃にやったことを今更こうして真正面から褒められると、表向きネロに直接向けられたものではないにも関わらずなんだか照れくさかった。
     「いや、盗賊団の中で字が書けるやつなんて数えるくらいしかいなかったし…」
     と思わず誤魔化すような口ぶりをしてしまってから気づく。咄嗟に助けを求めるようにブラッドリーを見てしまうと、彼はあからさまに大きなため息を吐いた。組んでいた長い脚を解き、身を乗り出してジトっとネロを睨む。
     「なんで東の飯屋のてめえがそんなこと分かんだよ」
     「えっ、それはその…、あっそうそう、こないだそんな話してて聞いたんだよ。な、あんた言ってただろ?」
     「………ふん、まあそういうことにしといてやるよ」
     ブラッドリーは呆れたように鼻を鳴らすと、話は戻すが、と前置きして先程の続きを語り始めた。
     「それで完全にバレてたなら認めてやって俺様からの贈り物ってことにしてやっても良かったんだけどよぉ、まだ確信持ってたわけではなさそうだったからからかってやろうと思って言ってやったんだよ」
     不思議そうに首を傾げる賢者にニヤリと笑みを深めたブラッドリーは、手品のタネでも明かすように再び口を開いた。
     「『知らねえな。精霊にでもやられたんじゃねえか? 最近は筆跡まねて面白がるやつらもいんだよ』ってな! そしたらあいつ、納得したようなしてないような顔して頷くもんだから逆に驚いちまったぜ。ったく、鋭いんだか鈍いんだか分からねえな。…んだよ飯屋、真っ赤な顔して。――まさか、今の今まで信じてやがったのか…って胡椒やめろ! は…、は、はっくしょん!」
     賢者が制止する間もなく、召喚された胡椒によってくしゃみをさせられたブラッドリーはどこかへ飛ばされてしまった。
     「ネロ…(今の今まで信じてたんだな…)」
     「今日の話、聞かなかったことにしてくれ…」
     あとには耳まで真っ赤にして胡椒ビンを握りしめたネロとソファに腰掛けたまま呆然とする賢者だけが残されたのだった。
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