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    chinohen

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    chinohen

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    S2の5話でロキの本心をシルヴィが引き出した、あのシーンがもし続いていたらな捏造。ロキメビのつもりです。メビウスを愛おしいと思うロキと、話を聞くシルヴィ。短いのとちゃんと読み返してないのですみません。

    ロキ→メビウス流れてくる昔のロックミュージック、ビリヤードの球が弾ける音、昔のゲーム機から恐ろしそうな声が聞こえてくる。アンティークと呼ぶにはまだ若い、一昔前のものに囲まれているバーの中で、シルヴィはバーボンをワンショット一気に飲み干してからバーテンダーに「もう一杯もらえる?」と言った。
    「それで、詳しく聞かせてよ」
    隣のスツールに腰掛けて項垂れているロキに好奇心一杯に目を輝かせながらシルヴィは言った。TVAを救わねば、とシルヴィの前に現れたロキに何度もやり直しをさせて何度目かにようやく「友達を取り戻したい。独りは嫌だ」と本心を引き出したシルヴィは、さらに深い本心を聞き出したくてうずうずしていた。シルヴィにとってはロキの言う崩壊しかけているTVAの行く末などどうでも良く、ただ別な世界の自分がここまで言い切った相手について知りたくて仕方がなかった。チラリとロキはシルヴィへ視線を向けたが「今はそれどころじゃない」と言って突っぱね、立ちあがろうとした。だがシルヴィはそれを許さずにロキの腕を掴んで「今だから、だって」と、そのままスツールに引きとどめる。
    「今を逃したら永遠に自分の気持ちを吐き出せないままになる。私が何度もやり直しをさせなかったらさっきの言葉だって出てこなかった、そうだよね?だから、ほら、吐き出しなよ」
    「吐き出すって、何をだ」
    「だから、あなたがさっき言った『友達』について」
    シルヴィと同じ色をしているはずだというのに、今は深い暗闇の中にいるような影が差しているロキの緑色の目を覗き込んでシルヴィがまた尋ねる。ロキは自分の手を掴むシルヴィの手を振り解く事なく、そのまま少し考え込んでから口を開いた。
    「……友達は、TVAのみんなだ。メビウスやB-15、OBにケイシー、それに君だ」
    合わせた視線を逸らして答えたロキに、シルヴィはほんの少し呆れと怒りを露わにしてちょうどバーテンダーが運んできたバーボンをまた一気に飲み干した。
    「またそうやって自分を誤魔化す。どうして?自分の事を知るのがそんなに怖い?」
    「シルヴィ、これは一体なんなんだ。私は尋問でもされているのか?」
    「尋問じゃない。これはあなたのためのいわばセラピーだよ。自分を見つめるための。本当に自分が欲しいもの。それが分からないと自分が何に向かって走っているのか分からなくなるでしょ。あなたが言った『友達』それって誰の事?」
    「だからさっきも言っただろ。TVAのみんなだ」
    「それは嘘じゃないけど、本当でもないよね」
    貫くような鋭いシルヴィの声と視線にロキは言葉を詰まらせる。真実を言い当てるシルヴィの言葉を誤魔化すようにロキは目の前に置かれたままのバーボンのショットを口にする。グッと一息に飲み干すと、甘く香ばしい香りの後に喉がカッと熱くなりロキは少しだけ咳き込んだ。これよりもアルコール度数の高い酒を過去に何度も飲んでいるが、こんな風にロキは咳き込む事はなかった。バーテンダーが差し出した水で口を潤しながら自分でも驚くほど動揺しているロキに、今度は優しくシルヴィが尋ねる。
    「聞き方が悪かったかな。さっき『友達』と言った時、あなたの頭の中に浮かんだのは誰の顔だった?」
    「誰なんてのはない。あれは咄嗟に出てきた」
    「そうだよね。でも、今はどう?あなたの取り戻したい『友達』って誰?あんたの頭の中に浮かんでるのは誰の姿?」
    シルヴィの言葉は魔法を使っているわけでもないのに、ロキの脳裏に一人の姿を映し出そうとしている。一緒に過ごした時間はロキが生きてきたとても長い時間の中ではほんの一瞬だというのに、駆けずり回ってでも取り戻したいと願ってしまう人物。ロキは分かっているのに、その名前をシルヴィに言うのが怖いと思ってしまう。内に秘めたままであれば、それは現実になっていない。だが、一度言葉にしてしまうと現実としてこの世界に事実として残ってしまう。ロキは逡巡しながら口を開いた。
    「……メビウスだ」
    両手で掴んだ水が入ったグラスを見つめながら、ロキはメビウスの名を口にした。TVAに連行されてからずっとロキを見て来ていたメビウス。どこでもどの時代でも、ロキが何者なのかを知ろうとしてくれたメビウス。ロキに優しくしてくれて、ロキも優しくしたいと思える、そんな相手がメビウスだった。シルヴィの言う、取り戻したい友達はTVAのみんなである事は間違いがない。だが、何をしてでもどうしても取り戻したい人物を思い浮かべると、ロキの心の中に現れるのははにかんだような笑顔をメビウスだった。いつの間にかメビウスはロキが心の底から愛おしいと思える存在になっていた。
    「私はメビウスを取り戻したいんだ。メビウスがいない世界に独りでいたくない。だから何としてでもTVAを元に戻したい」
    「ほら言えたじゃない」
    そう言ってシルヴィは満足したのか、にっこりと笑顔を浮かべるとロキの背をポンと叩いた。
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    chinohen

    DOODLES2の5話でロキの本心をシルヴィが引き出した、あのシーンがもし続いていたらな捏造。ロキメビのつもりです。メビウスを愛おしいと思うロキと、話を聞くシルヴィ。短いのとちゃんと読み返してないのですみません。
    ロキ→メビウス流れてくる昔のロックミュージック、ビリヤードの球が弾ける音、昔のゲーム機から恐ろしそうな声が聞こえてくる。アンティークと呼ぶにはまだ若い、一昔前のものに囲まれているバーの中で、シルヴィはバーボンをワンショット一気に飲み干してからバーテンダーに「もう一杯もらえる?」と言った。
    「それで、詳しく聞かせてよ」
    隣のスツールに腰掛けて項垂れているロキに好奇心一杯に目を輝かせながらシルヴィは言った。TVAを救わねば、とシルヴィの前に現れたロキに何度もやり直しをさせて何度目かにようやく「友達を取り戻したい。独りは嫌だ」と本心を引き出したシルヴィは、さらに深い本心を聞き出したくてうずうずしていた。シルヴィにとってはロキの言う崩壊しかけているTVAの行く末などどうでも良く、ただ別な世界の自分がここまで言い切った相手について知りたくて仕方がなかった。チラリとロキはシルヴィへ視線を向けたが「今はそれどころじゃない」と言って突っぱね、立ちあがろうとした。だがシルヴィはそれを許さずにロキの腕を掴んで「今だから、だって」と、そのままスツールに引きとどめる。
    2023

    chinohen

    DOODLEグランツーリスモの映画のやつです。ドバイのレースの夜にジャックとダニーがお話してる、こんな夜があったのならなifなやつで。二人がヤンについて話してるだけで、特に何も起きません。あと、無駄に長くなり終わらせられなかったので最後の方はグダグダしてるのと、ちゃんと読み直してないので適当なところは見逃してください。
    用意された豪華なホテルの一室でジャックはミニバーの中にビールがあるのを見つけると、それとグラスを手に取り窓のそばに据え置かれたテーブルへ並べた。窓からは異世界のように見えるドバイの夜景が見下ろせる。椅子に腰掛けて外を眺めながら冷えたビールのプルタブを引き、ジャックは中身をグラスへと注いだ。いつもなら缶に直接口をつけて飲んでしまうが、今夜はめでたい夜だ。先ほどまでヤンが見事に日産からの要求に応えライセンス獲得を達成できた祝いにと、ホテルのバーでパーティが催されていた。
    レース主催者が手筈を整えていたようで、ヤンやジャックのチームだけでなくどこから現れたのかドバイのカーレース好きの金持ちやその取り巻き達、明らかにこの国の人間ではないインフルエンサー、モデルかなにかだろう露出の多い着飾った女達、その他もろもろの得体の知れない人間達がその場で音楽と酒とヤンが引き寄せる「勝者の空気」を求めて薄暗い部屋の中で蠢いていた。
    6590

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     見上げる空は雲の一片もなく、まだ夏の熱気に揺らぐ前の星々は、一粒一粒がくっきりと輝いて見えた。視界の端から端まで、遮るものなく広がる星空をずっと見ていると、だんだんと天地が逆転しているような錯覚に陥る。まるで夜空を見下ろしているような——否、そもそもこの大地は、突き詰めれば途方もなく大きな玉なのだ。そこにはきっと上も下もない。見上げているのか見下ろしているのか、そんなことは、考えるまでもなく曖昧だ。老君に連れられて、初めて月宮へ行った時のことを思い出す。あの時は、砂だらけの黒白の世界から、色鮮やかなこの世を、ただぽかんとして見上げていた。俺たちが何気なく暮らしているこの星も、ひとたび外に出てみれば、漆黒の空に浮かぶ光のひとつとなる。それがどうにも不思議で、そして遠ざかったからこそ、俺たちの暮らすこの大地が、妙に愛しく見えた。その時は、その愛しさの源は、一体なんだろうと思っていたけれど、今にして思えば、それは、笑ってしまうほど単純な理由だった。
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