ちびずきんちゃんある所に白いフードのついたケープがお気に入りの子がいました。
他の子に比べて小柄で幼げな顔つきのその子は周りからちびちゃん、や頭巾ちゃん、と呼ばれては親しまれていました。ここではちびちゃんと呼ぶことにします。頭巾ちゃんあんまり可愛くないので。
ある日のことです。
ちびちゃんの友達であるディーナ(とても美人で優しいのでちびちゃんは彼女のことがとても好きです)が、困った様に頬に手を当てて溜息をつきました。
それにちびちゃんはどうしたの、とききました。
するとディーナは、実は、と言って籠を差し出しました。
開けると中には苺が沢山入っています。
蓋を開けただけで甘酸っぱい匂いが一気に広がって、思わずちびちゃんの表情が綻びます。
これを森の外れにいるお友達に届けたいのだけれど、今から急な用事でいけなくなってしまった。しかし生物だから早く届けないといけない。
そう言って困った顔をするディーナに、ちびちゃんはあーんしてもらった苺をもむもむと食べながら、考えます。
ショートケーキ、ムース、ジャム……。
ぽんぽんと頭に浮かぶ美味しい想像に、ふにゃりと顔が緩みそうになって、しかし慌てて引き締めます。ディーナが困っているのです。
それなら、とちびちゃんは言いました。
わたしが届けるよ!
ふんす、と胸を張って両手で籠を持ちます。
ディーナは心配そうに目を伏せると、ちびちゃんの頭を撫でて言いました。
森には悪い狼さんがいるから、ちびちゃんだけでは危ないわ。
その言葉にちびちゃんはきゅっと口元を引き締めて、真剣な顔でこくりと頷きました。
ここ最近、森に入った人たちを言葉巧みに騙して食べようとする狼がいる噂はしっていました。
ちびちゃんなんてきっと一飲みです。
それでもディーナが困っているなら助けになりたいちびちゃんは、大丈夫、森なら何度か入ったことがあるから、ともう一度胸を張りました。
お届け先のおうちもちびちゃんのよく知る場所ーーハディさんという、ちびちゃんともお友達のおうちですーーだったので、大丈夫だ、と。
その様子にディーナは、やはり心配しながらも、ぎゅっと抱きしめて、
「狼が出たら、これを鳴らすのよ」
そう言って、手のひらよりも大きい位の鈴をちびちゃんに渡しました。