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    尽くしたいSub攻め副会長×Dom受けロロ会長

    ※副くんが攻めです
    ※攻めが攻めっぽくないです
    ※NBC夏服にオリジナル要素あり

    NBC夏服事変!「……ん……」
     少しの蒸し暑さが、肌に触れる。ゆっくりと目を開けて、隣に寝そべる彼の額にかかった前髪をそっと撫でた。
    「ふふ、ふわふわしてる」
     いつもは整えられた、真っ直ぐな白い髪。気温が上がってきて汗ばむ季節になると、こうして少し癖が出てしまうらしい。

     彼———ロロ・フランム会長と、パートナーになってから知った事だ。

    「それにしても……夏服かぁ。嬉しいな」
     ノーブルベルカレッジは、今日から夏服に衣替え。実は昨日、僕と会長は一足先に袖を通していた。朝慌てて引っ張り出してくるよりも、先に用意しておいた方がやっぱり安心だからね。それに生徒会の一員として、僕達は生徒のお手本にならなくてはいけないもの。
     夏服姿のロロ会長……凄く、素敵だったな。勿論いつもの会長服は威厳があって、ロロ会長の風格にとてもよく似合っているけれど。夏用のポロシャツは一般生徒と同じものになる。
     胸元には学年別の、深い赤色のエンブレム。
     シャツの袖から覗く細い腕は白く透き通って。

     そして何より。
    「ロロ会長と、お揃い……!」
     一人で口元を綻ばせ、しかし慌てて自分の頬を軽く叩く。
     いや、間違っていないけれど。正確には学園全体で『お揃い』なんだけど。それでも僕は、この心が躍らずにはいられない。だから昨日もウキウキとしながら、白いポロシャツに腕を通したのだ。
     僕は学年が一つ下なので、胸のエンブレムは青色。かっちりとした生地にラインが入ると、よりかしこまった印象に。まさにノーブルベルカレッジらしいデザインでは無いだろうか。

    『うん、よく似合っている。———“おいで”。もっとよく、私に”見せて”……んふふ。実にお利口だな』
     落ち着きのある響きが、耳の奥に蘇った。思い出すだけでも、身体が更に熱くなる。この世界には男女の性別以外にもう一つの『性別』があって、僕は『Sub』と呼ばれる性。対してロロ会長は『Dom』と呼ばれる性であり、Subにcommand———いわゆる“命令”、そして支配出来る立場にあたるのだ。

     僕は、彼のSubとして彼に尽くして。
     彼は、そんな僕を赦してくれている。

     なので、昨日もその……いや、あくまでスキンシップの一環として。僕も久々の夏服で気分が上がっちゃったというか……あ!もちろん『Play』だけだよ?!さっ、最後まではして、ない、し……だって会長にはお身体に負担をかけられないし。それに約束したんだもん。学生の本分は勉強なんだから、たとえパートナーでも“それ以上”は休日だけって。平日は

     平日は———……?

    「かっ、会長!ロロ会長、起きて下さい!」
     ハッと我に帰り、上半身を跳ね起こした。大変心苦しかったが心地良さそうに眠る彼の肩を揺すり、大声で呼びかける。
    「……、ん……?」
    「おはようございます、会長。もう朝です、急いで着替えないと」
     決して遅刻では無いけれど、いつもなら支度が済んでいる時間だ。まどろんでいた瞳はほんの少し揺れ動いた後、カッと見開いた。

    「おはよう。すぐ支度にかかろう」
    「はい!」
    「今日の鐘撞き係は、補佐役の彼だったな」
    「ですね。起きれているとは、思うのですが」
    「念の為私が見に行こう。先に顔を洗っても?」
    「もちろん」
     ベッドから抜け出して、お互い手を動かしながら言葉を交わす。目はすっかり覚めて、頭の中に素早く並べたタスクを迅速にこなす。
     僕がこの後、顔を洗って。昨日の内に夏服を用意しておいたのは、本当に正解だったな。
    「会長、どうぞ」
    「ありがとう」
     きちんと畳んでおいたポロシャツを渡し、洗面台へと急ぐ。顔を拭き、部屋に戻って来たら彼は既に着替え終わって、今日の授業に使う教科書を確認していた。
    「忘れ物はないかね」
    「大丈夫です。鐘楼の方に、僕も行きましょうか?」
    「いや、三人で行っても時間がかかるだけだ。私だけで十分だろう。君は先に、食堂へ行きたまえ。授業には遅刻しないように」
     淡々と述べ、彼はシャツの襟を正すと部屋のドアノブに手を掛けた。僕も続いて廊下へ出る。この様子じゃ、今日の朝食はコーヒーだけで済ませる気なんだろうな。
    「時間が無いかもしれませんが、少しは何か食べて下さいね。会長」
    「む……善処しよう」
     きゅ、と眉を寄せて彼は小さく頷いた。かっちりとしたポロシャツでそんな仕草をすると、なんだかいつもより幼く見えてしまって可愛らしい。思わず微笑んでしまう。
    「では、また」
    「はい」
    「……あっ。”待ってくれ”、副会長」
     不意に言われて、僕は即座に振り返った。そんなに強いcommandでは無いが、完全に生徒会(仕事)モードになっている僕だったので、てっきり何か事務的な事だと思ったから。

     しかし。

    「っ!」
     ふに、と頬に柔らかい感触。それから、ジャスミンのような控えめで、でも上品な香りが鼻をくすぐる。
     ぐわーっと、身体が熱くなった。僕は今、唇を離した会長よりも、真っ赤な顔になってるだろう。

    「……では、また。生徒会室で」
     低く、消え入りそうな、けれどもはっきりとそう言って彼は踵を返す。僕はかろうじてこくこくと頷くと、浮き立つ気持ちで食堂へと駆けて行った。

    「おはよう!」
    「おはよう〜。もう、朝から夏服探しちゃったよ」
     廊下や食堂には、生徒達が朝の挨拶を交わしていた。よしよし、うっかり通常の制服で出て来てしまった子は今のところ居ないようだ。
    「やぁおはよう」
    「あぁ、おは……」
     クラスメイトがいたので声をかけると、一人は僕を見るなり口を開けたままピタッと固まってしまった。もう一人は「あっ」と小さく声を漏らす。

    「ん?あれ、どうかした?」
    「う、ううん!何でもない、おはよう」
    「そう?……僕、何か付いてる?」
    「いやいや、何にも。全然。普通だよ?」
     僕の問いかけに二人はぶんぶんと首を振る。ちょっと不思議に思って、自分の顔を拭ったり髪を触ったり———あとはシャツの襟を正してみたりする。何もおかしなところは見つからない。
    「うーん……?二人とも、僕に何か隠してないかい」
    「隠してなんかないよ〜。さっ、朝ごはん食べに行こ」
    「そうそう。なんたって今日から夏服なんだから!しっかり食べて、暑さに負けない様にしなきゃ」
     さっきよりも大分高いテンションで背中を押される。腑に落ちないまま、僕はクラスメイト達と一緒に朝食を取りに行くのだった。


     ……のだが。
    「何だか、すごく視線を感じるような……?」
     食べている時も、廊下を歩いている時も。なんなら今、教室に入る時も行き交う生徒達からちらりと見られている気がする。
     なんでだろう?……それとも、気のせいかな。
     一人で首を捻っていると、チャイムが鳴って先生が入って来た。
    「やぁ皆、おはよう」
    「おはようございます!」
    「ふむ、しっかり夏服の準備が出来ているようだね。ところで」

     先生はじっくり皆を見て周った後、ふと僕の机の前で足を止めた。そして、僕を———正確には僕の胸元を見て首を傾げる。

    「君、いつから三年生になったのかな?副会長くん」


     は。
     え?……えっ?!

    「あっ……!」
     先生が言った言葉の意味を理解した瞬間、僕は思わず立ち上がって自分のポロシャツに目を向けた。
     するとどうだろう。胸元には鐘モチーフのエンブレムが———なんと”赤色”の刺繍で、ありありと描かれているでは無いか。

    「あーっ!先生、何で言っちゃうんですか?!僕達ずっと、彼に言わないようにしていたのに!」
    「えぇっ?!私が悪いのかい?」
    「お二人はこの学園公認の、激アツラブラブ生徒会カップルなんですよ?!制服交換なんてまたと無い供給だったのに……あぁほら、彼が照れてしまったではないですか!」
    「先生その公認カップル知らないんだけど……」
     真っ白な頭の中に、周りの声が遠くから響いている。わぁわぁと叫ぶ声の真ん中にいる僕は、震える手でポロシャツの裾を握りしめた。

     なぜ、どうして。
     僕は確かに、ロロ会長にきちんと、渡したはずなのに。会長側に置いてあったポロシャツを。
    「あれ……そういえば昨日置いたのって……その時、入れ替わって……?!」
     必死に記憶を呼び起こす。そう、そうだ、僕達は夏服に袖を通して。……そのまま、ほんの少しだけ『Play 』してもらって……その後、シャツを脱いで。

     部屋、電気消してたよな。
     ……胸元の刺繍まで、確認せずに置いちゃったかもしれない……!


    「ぁ、ぼ、僕……今すぐ行ってきます。制服、会長と替えてこなくちゃ!」
     僕の所為だ。僕の失態だ。恥ずかしさと絶望感で頭がいっぱいになり、思考が追いつかない。今にも火が吹き出そうな顔で廊下に飛び出そうとした僕を、先程朝食を共にしたクラスメイトが慌てて掴む。
    「ちょ、ちょっと待って!落ち着いて。ここから三年生の教室まで少し離れてるじゃないか。すぐに行くなんて無茶だよ」
    「そうだよ〜。それに、もう授業始まっちゃうし……とりあえず座ろう。ね?次の休み時間に行けば良いさ」
     既にチャイムは鳴り終わっている。確かに今は授業の時間。
     生徒達のお手本として。……僕は俯いて、椅子に戻る事とした。

    「えーと、それでは136ページから」
     軽く咳払いした後、先生は気を取り直したように教科書を開く。皆と一緒に教科書とノートを開いても、まだじんじんと耳が熱かった。
    「大丈夫?まだ顔、熱い?」
    「大丈夫じゃない……何で教えてくれなかったのぉ……」
    「ご、ごめんね。でも、本っ当に可愛くて……すぐ言っちゃうの、勿体無いなーって」
     先生が教科書を読むあいだに、クラスメイトがこっそりと声をかけてくれた。未だに茹蛸状態の僕を見て、すぐに窓を少し開けてくれる。まだ暑くない風が吹き込んで、涼しさを感じられた。

    「うぅ、ロロ会長に謝らなきゃ。……幻滅されたらどうしよう」
     自分で呟き、思わず視界が滲んだ。僕の所為で、会長もこんな風に恥ずかしい思いをしているかもしれない。それに、会長はとても綺麗好きな人だ。……僕の、他人のシャツを着るなんて不快じゃ無いだろうか。
     それに、それに。間違えたのは僕なんだ。……し、仕事が出来ない奴だと呆れて、僕の事、嫌いになっちゃうんじゃ……
    「ゔー……」
    「あぁ、泣かないで。目が腫れちゃう」
    「心配しすぎだって〜。ロロ会長はそんな事でいちいち腹を立てるようなお方じゃ無いだろう?それに、何と言っても君はロロ会長のパートナーなんだから!きっと微笑んで許してくれるよ」

     そう、だろうか。
     悩んでいても、もう仕方が無い。後ですぐ、走って謝りに行こう。
     やっと気持ちが少し落ち着いて、自分を整えるように深呼吸する。すると。

     ———ふわっ、とほのかな甘い香りがした。
    (これは……!ロロ会長の)
     控えめに華やぐ、上品な匂いに覚えがあった。今朝、ロロ会長から香ったジャスミンの花だ。香水か何かだろうか。強くないけれど、とても良い香り。

     まるで、ロロ会長に———……

    「……〜ッ!」
     収まっていたはずの感情が、再びぶわりと溢れかえる。いけないと思いつつもシャツの襟をそっと持ち、鼻を近づけてはまた赤くなって。
     そんな僕を、クラスメイト達は先生に隠れながら氷魔法や風魔法を使って冷やしてくれるのだった。



    「では、本日はここまで。しっかりと復習しておいてね」
     チャイムと同時に、先生は授業を締め括った。僕はすぐさま立ち上がって、足早に廊下へと出る。
    「あぁっ、待って!」
    「交換した制服、もっとよく見せてー!」
    「ロロ会長とは結局どこまでいったんだ?!」
    「二人の話、もっと聞きたいよ〜!」
     そんな声をかいくぐって、出来る限りの早歩きで三年生の教室へと急いだ。本当は走り出したいけれど、それは校則違反だし。走って誰かにぶつかっても危ないからね。

     早く、早く。
     急いで、でも汗はかかないようにしてあのお方の元へ。

    「あ……ロロ会長!」
     教室に辿り着くその手前で、向かい側から同じく急ぎ足で歩く人影を見つけた。焦っているような表情が、僕を見てほんの少しやわらぐ。
    「あぁ、君か。良かった、ちょうど私も行こうとしていたんだ」
     ほぅと息をつく彼を見て、とてつもなく申し訳ない気持ちと共に僕は目を見開く。そしてぎゅうと自分の胸を押さえつけた。

     どうしてって?
     彼が、ロロ会長が———青色のエンブレム付きポロシャツを身につけていたからである。
    (あぁっ、ロロ会長が二年生のポロシャツを……二年生のロロ会長……?!)
     刹那、学年が一つ下になったロロ会長が脳内に降りてきた。やっぱり、赤もいいけれど青も似合うなぁ……あっ、しかも同じ学年なら……『会長』じゃちょっと変か。じゃあ……例えば……ロロくん、とか?!いや、それはグイグイ行き過ぎか?最初はフランムくん、かな?いやいや、ここはむしろもっとフレンドリーに……ろ、ロロ、とか呼んじゃって

    「違う!」
     己にそう叫び、ばちんと自分の頬を叩く。そして倒れ込む勢い(実際には制服を汚すわけにはいかないので、膝を曲げて両手を着く四つ這いスタイル)で彼に頭を下げた。
    「あの……っ、その、この度は本当に……大変申し訳ありませんでした。すぐに、……脱ぎます、ので」
     消え入りそうな声で、固く目を瞑る。とても彼の表情を見てなんて言えなかった。すると、項垂れている頭上から柔らかい声が響く。
    「”顔を上げて”」
    「っ、う」
    「私の方こそ悪かった。先に着替えていたのに、鏡を見ていなくて……鐘楼に向かう時、すぐに気がついたのだ。けれど時間が時間だったし……何というか、うん」
     僕の手を取って立たせ、見つめながら話していた彼がふと口元を押さえた。不思議に思って見ると、心なしか彼の頬がほんのり色づいている。

    「同じ、制服のはずなのだが……君のを着ていると、気持ちが落ち着くというか。……あ、安心する、ような……いや気のせいだとはわかっている。魔法の類いも、特にかかってはいなかろう?何とも不可思議な話だが、その、ええと」

     じわじわと、彼の白い肌が赤く染まっていく。多分、僕も同じくらいに赤くなっている事だろう。

    「それでだな。き、着替えるのにも時間を要するし……今日は飛行術の授業も無い。君さえ問題無ければ……制服はそのままにしていないか」
    「そ、それは」

     いいのだろうか。僕は全然、何にも問題は無いのだけれど。むしろ凄く、嬉しいのだけれど。でも。

    「君はどうしたい?———“教えて”」

     commandだ。でも、全然強くない。強制的なものは何も感じられない。けれど、彼の瞳が微かに揺らめくのを見て、僕は息を吸った。

    「僕は……僕も、着ていたい、です。今日一日だけでも、肌身離さず……貴方を感じていたいです……!」

     震える声でそう伝えると、彼は、いつもよりもややあどけない笑顔で小さく頷いてくれた。それが、本当に天使のように見えてしまって僕は考えるより先に腕を伸ばして抱きしめる。廊下にはいつの間にか生徒達が集まって、歓声が大きく轟いた。

     以上が、後に『ノーブルベルカレッジ夏服事変』と呼ばれる騒動である。
     そして、これを気に学園内の恋人間で制服を交換する事が大流行して、先生からちょっと注意されてしまうのは少し先のお話なのであった———……
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