「口実(仮)」波の音を遠くに聞きながら夜空の月を見上げる。
この島に来てから、いつの間にかそんな習慣が出来上がっていた。
寄せる波は今日も穏やかで、あの日の嵐の跡を見つけることは難しい。船の修復を理由に、この島に滞在するようになってどのくらいの時間が経ったのか。漂着した当初こそ混乱と焦りに加え慣れない環境に疲弊したものだが、今では思いがけない休日のように日々を楽しんでいた。
無論、事態は楽観視できるようなことばかりではない。
自分たちがこうして流れついたように、同じ船に乗船し、あまつさえ今は自分の手元にある魔剣を取り返そうと躍起になっている帝国の部隊の存在は、決して無視できるものではない。
いや、帝国の部隊というだけならここまでの煩わしさは感じなかったはずだ。隊を束ねる指揮官が彼女でさえなければもっと容易く退けられるのではないかと、ありもしないことを考えて嘆息する。
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