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    rainbow_ryoki

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    rainbow_ryoki

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    雛祭りな神前式
    例の衝撃のエモートになんとか理由をつけようとした話です。
    カプなし(ですが製造者はあきけの人です)、全員生存ユニバース。

    Eの報告2月22日から2月23日怪異というのは本当に色んなものがあるもので、かくれんぼに誘う子ども、呪いの市松人形や、飛び降りが絶えないビル、呪われた宝石……
    二人が出会った、たった1日の中でも数え切れないほどある。
    それくらい多彩だ、だから、今回の怪異というものはその多彩のうちのとびきり彩りがあるものだと考える。

    発端は、とある古物商からの連絡。
    なんでも買い取った品に呪いがかかっているらしくどうにかしてほしい……とのことだ。

    「嫌な予感しかしねぇ」
    「まぁまぁ、行ってみなきゃわかんないよ」

    出かける前の二人のやり取りを思い出す。
    眉間に皺を寄せた中年男性と、どこにでもいそうでいない好青年
    あの夜から半年、KKと暁人はゴーストワイヤーのメインメンバーとなっていた。
    特に暁人は物覚えが良く、今やあの気難しいKKが肩を預けるまでとなっていた。

    しかし、それが今はとんでもないことになっている。

    連絡が入ったのは夜中、懇意にしている神社から。

    「詳しくは、いやなんとも言えないんですがここに連絡してくれと形代を渡されて」

    二人共なんらかの行動不能時に使用される形代のことである。
    その場に居合わせた全員が装備を整えアジトを後にした。

    「これを渡されて、神前式の神殿に入れてくれと」

    形代には懇意にしている神社の者にしか読めない文字情報が込められている、つまりは名刺である。
    それが読めるということはこちらの仕事を知る者、協力者の証だ。

    「どの神殿ですか?」
    「あちらです、当分の間式の予約は承っておりませんので時間は気にせず使ってください」
    「ありがとうございます」

    凛子が言った。

    「あの、驚かないでといいますか……そのなんといったら良いかわからないのですが……奇妙な格好でした」
    「それは恐ろしいような?」
    「いや、なんといいましたかね……ええと、どこかで見たような……その、ナニかの着ぐるみなんです」

    全員の目が点になった、これは比喩である、そのような気持ちである。

    二人がいる神殿の前で準備を整える、神主には人払いをしてもらった、幸い平日の夜、人は疎らだ。
    見えない3人は霊体観測装置の設置と観測、見える2人は弓と札を装備してもらった。
    麻里と絵梨佳は年が近いこともあり、今では親友であり暁人とKKに次ぐかもしれないコンビだ。

    「霊体を1体確認、生者は2名……バイタルは安定してるけれど意識レベルが低い」
    凛子が読み上げる、データ上睡眠、昏睡、あるいは乗っ取られている状態だ。

    「2人とも準備はいい?」

    麻里と絵梨佳はこくりと頷いた。
    こちらも頷く。

    「入るわよ!」

    開け放たれた神殿の扉そこに

    『本日は我々の式にお越しいただきありがとうございます』

    細長い木製の板、笏と呼ばれる物を持って青年が頭を下げた。
    その穏やかな笑顔、きちんとした佇まいはまさに好青年……きぐるみでなければの話だが。

    「おにいちゃん……?」

    麻里が驚きつつも声をかける、ほんの一瞬の静止の後暁人はわざとらしいほどの笑顔で口を開いた。

    『…………来てくれたんだね妹よ!』
    「お兄ちゃんが変!」
    「麻里ちゃん落ち着いて、気持ちはわかる、でもおちつ、ぶ……ふふ」

    凛子は基本的に冷静沈着だ、しかし今は目の前の光景に口元を押さえ噴き出している。

    『う……女性?ッ』

    まるで作ったかのように整った笑顔を見せる青年の横の人影がガクリと動く

    「……ッ、笑う、な!」

    声をあげたその人影は想像通りの人物、そうKKだった。

    「やっと出られた……時間がねぇ早くこの幽霊の願いを叶えて……だから笑うな!」

    皆が笑うのも仕方のないことだった、何故なら二人ともたぬきの擬人化のようなキャラの雛人形のきぐるみ姿だから。
    しかも何故か顔だけが出ていて更にシュールさを醸し出している。

    「ぶふっ、わかったっから……」
    「クソ……この霊の願いは雛人形みたいな神前式での結婚だ 形だけでいい、祝福してやってくれ オレの意識も長くは保たないが願いが叶えば開放される、そこのおかしな笑顔の相棒もな」
    「わかっ……た」
    「これから見る式を笑うなよ!オレも真に遺憾で不本意だが仕方なくやってるだけだからな!!」

    KKは顔を真っ赤にして声を張り上げた、あまり聞き心地の良い声ではないがこの不本意な状況なら仕方がないのだろう。

    「わかった、わかったから」
    「それと麻里、オマエは新郎の妹としてふるまってくれ 凛子、オマエと絵梨佳は新婦側の会社の知り合いとその妹だ」
    「まあそうなるのか」
    「新郎側に女がいるとややこしいんだよ!オレの都合じゃねえ!」
    「Kさんがお姉さん、アレ?お兄さんになる?」
    「ならねぇよ」

    呆れたようにKKが麻里に向かって重そうな首を横に振った。

    「……が、頑張るね」

    絵梨佳は笑わないよう目を逸らしながら言った。
    きょろきょろと目が泳いでいる。

    「あとは……カメラマンにでもなっててくれ、これ以上ややこしくならねぇようにな……オイ、目をそらすな」

    言われて僕たちは無言でうなずくよりほかなかった。
    しばらくしてパキ、と家鳴りが始まった。
    どうやら式が始まるらしい。

    「時間切れだ、あとは頼んだぞ……!」

    その体がまたガクリと震えた後、僕たちはカメラを構えた。

    『本日はお日柄もよく、皆々様 我々二人の結婚式にお集まりいただき真にありがとうございます』
    『皆様に囲まれて我々二人は夫婦となります』

    その挨拶と共に二人は重そうな頭部をゆっくりと下げる。
    そしていつの間にか置かれていた朱塗りの盆を手にした。

    大中小の盃と小さな急須のようなもの。これはおそらく三献の儀だ。
    本来ならここまでに色々な手順があるが、その中に祓いの儀式があるのであえて飛ばされているのかもしれない。
    つまり前半のクライマックスである夫婦の契をやりたいのだろう。
    小、中、大と盃が二人の間を行き来して、最後に一口。

    新郎と新婦が互いに嬉しそうに微笑みあっている(が、見た目はきぐるみを身にまとった青年と中年男性だ)
    その様子に女性陣は口元をおさえて感動して涙ぐんでいるかのように振る舞っている。
    (もちろん笑いをこらえているのが本音だろう)

    「お兄ちゃん、おめでとう……」

    麻里ちゃんはナイスアシストだ、というよりもこの兄妹は肝が座っている。

    にこ、と微笑んだ新郎(謎のきぐるみ姿)。
    頬を染めて恥ずかしそうに顔をうつむかせるいじらしい新婦(謎のきぐるみ姿の中年男性)。
    耐えきれず全員が拍手を送った、これで笑い声がカムフラージュもになるだろう。

    『嬉しい……嬉しい……これが夢だったの……しかもこんなイケメンと……たとえ真似事でも嬉しい……!ありがとう!!私、幸せになります!』

    感極まったかのような女性の声がその場に響き渡ると、女学生たちは上を見上げた。
    きっと成仏した霊が見えたのだろう。
    シン、とした空気が満ちて、なんとなく気持ちが明るくなった。

    「……っ、は?! えっ、なにここ? 頭重ッ……えっ、なにこの格好!!」

    好青年は勢いよく立ち上がった。

    「おかえりお兄ちゃん、素敵な式だったよ」
    「麻里? 式ってなん……うわKその格好なに、ブフッ、フフ……なにっ、ふふ、ひどい格好!」
    「オマエもだよこの色男!!あー!やってられるか!」

    乱雑に脱がれた頭部のパーツが、床に置かれてポコンと間の抜けた音を立てた。

    「久しぶりに心から笑わせてもらったわ、あとで報告書によろしく」
    「ったく、オイ お前が書け暁人、得意だろ」
    「意識なかったから教えてくれなきゃ無理だよ……」
    「クソッ、あとでビール奢ってくれ でなきゃやりきれねぇ」
    「わかったよ……もー」

    全く怪異とは不思議なものである。






    KK、暁人の調査報告書

    呪いのタヌキッチひな人形について

    対象物:タヌキッチ雛人形セット(年代物、昭和年代に限定発売されたものである。)

    二月二十二日 16時00分    〇◇小道具屋にて、連絡を受け赴く。
    同日     16時30分    同店到着、対象物の確認、霊視を行うと元の持ち主が宿っていることが分かった。
                   お雛様のような結婚式に憧れていたまま亡くなった妙齢(自称)の女幽霊に暁人が同情
    同日     16時45分    そこに付け込まれ女幽霊の理想の伴侶として振る舞うよう憑りつかれてしまう。
    同日     時刻不明    暁人のつながりを利用され、オレも体の自由を奪われる。
                   神前式ができる神社を知っていると提案し、神社へと転移することに成功、形代を神主に手渡す。
    同日     22時50分   アジトで待機していたエド、デイル、凛子、絵梨佳、麻里が神社に到着。
    同日     23時10分   少しの間意識を取り戻す、女幽霊の望みをかなえるために神前式を続行。
    この間の映像はエドが録画済み。
    二月二十三日 00時00分   暁人、オレ、意識を取り戻す。なお着用していたきぐるみはなぜ残っているか、いつ着せられたかも不明。

    タヌキッチひな人形は古物商に返却、料金の徴収担当 凛子
    なお着ぐるみはデイルが回収した。なんに使うんだ?

    身体的損傷 暁人 なし KK 肩こり

    暁人、KK 両名とも休暇申請 受諾済み
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