Fin.キミが鏡を割った。
鏡の破片がボクの皮膚を切り裂いて、赤い液体を伝わせた。
痛みも何も感じない。
痛くないよ、大丈夫。
そんなの嘘だ。本当は泣きたいほど痛いのだ。
キミは思いつく限りの謝罪の言葉を並べ、深呼吸をした。
キミが続けるもの、阿吽の先にあるのは死だろう。人はいつか死ぬ運命なのだから。
埃を吸ってしまったのだろうか。
あの子が青ざめた顔をして、ヒューヒューとあの隙間風のような音が聞こえる。
ナースコールが鳴り響く。
*
ボクは死んだ。キミの目の前で。
あれだけ離れたくないと願っていたキミのもとを、自らの足で、自らの手で、手放す道を選んだのだ。
愚かなボク。自分の幸せより陸の幸せを選ぶなんて、兄としての心得を弁えすぎだ。
好きだよ。好きだったよ。
さようなら。
流れ星が降り始めたら、また会えるといいね。